清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

被告人が 悪いと言っても 始まらない

横浜市瀬谷区で起こったOL殺人事件の控訴審判決が東京高等裁判所で8月29日に出されたが(第1審と同じく無期懲役)、判決が出る前の8月1日、被害者の母が自殺したそうだ。

8月30日付の読売新聞(東京本社版。仙台では社会面34頁)によると、第1審判決言渡し時の法廷(2005年3月28日)で、被告人が、「お前ら(家族)が駅に迎えに行かなかったから娘は死んだんだよ」、と家族に暴言を浴びせており、それに対して被害者の父が、「(被告人は長女(殺されたOL。筆者注)と妻の)2人を殺した」とコメントした。

たしかに、被告人の吐いた暴言は被害者の親族を傷つけるのに十分であるから、絶対に許されない。しかし、それだけでいいのだろうか。なぜこういうことを言うのかについて、以下に理由を述べる。

第1に、被告人に暴言を吐かせない究極の方法がないからである。(1)殺人事件を犯すような被告人に暴言を吐くような問題のある人がいても不思議ではない。(2)刑事訴訟法では第1審の場合は被告人が出頭しないと法廷を開くことが出来ない(刑事訴訟法第286条。控訴審につき第390条(出頭を要しないのが原則)、上告審につき第409条(召還が不要)参照)。(3)退廷をさせることは出来るが(刑事訴訟法第341条、裁判所法第71条第2項参照)、「法廷における裁判所の職務の執行を妨げ、又は不当な行状をするものに対し、退廷を命じ」ることができるに過ぎず、暴言を吐く恐れがある場合にまで退廷を命じることが出来ない。(4)(1)~(3)により、被告人に暴言を吐かせないようにするのは難しい。

第2に、暴言から約1年4ヶ月も経っているので、むしろケアの問題が大きいのではないかと思うからである。娘さんを殺され、その上暴言を吐かれたら精神的におかしくなってもやむを得ないだろう。ただ、それから1年4ヶ月も経っているので、暴言だけに罪を着せるのは難しいのではないか(もっとも、これは被告人を相手に民事訴訟を提起した場合に被告人に責任がないと言っているわけではない)。

肝心なことは、刑事事件の法廷と言うのは双方(検察官・被害者と被告人)の主張がぶつかり合うドロドロとした場所だと言うことを認識し、被告人の暴言に負けないようにすることである。

被害者の方には申し訳ないほど酷なことを書いてしまったが、ここに書かれたようなことを頭に入れるのが読者の皆様にとって有益だと思うので、許して欲しい。