紙の読売新聞2021年8月18日統合版12版11面「ニュースの門 ロックは今や中高年のもの?」(清川仁。本エントリーは以下も敬称略)が興味深かったので紹介する。
まずはデータ。「日本ゴールドディスク大賞の歴代アーティスト・オブ・イヤー(洋楽)の2012年から21年のデータが載っている。日本ゴールドディスク大賞HP「歴代のゴールドディスク大賞」(2021年8月18日アクセス。
https://www.golddisc.jp/award/ )にも掲載されているのでご確認を。
2012年はレディー・ガガ、2013年はシェネル、2014年、15年はワン・ダイレクション、2016年、18年はビートルズ、2017年はアリアナ・グランデ、2019年から3年連続でクイーンである。
直近10年間はイギリスの人がトップの場合が多いのにびっくりした*1。筆者はポップスと言えばアメリカをイメージするが、そんなに単純じゃないんだな。
本文。
洋楽の人気は低迷している。/日本レコード協会によると、2020年のCDなどの邦盤と洋盤の生産数の比率は、邦盤89%に対し、洋盤11%。10年代前半までは、約2割が洋盤だったが、下降傾向は止まらない。国内勢のサウンドの質の向上という前向きな理由もあるが、洋楽の質的な変化、環境面の変化が指摘されている。/今の米音楽界の主流の一つはヒップホップ。速射砲のようなラップで米国の社会問題などを歌う。意味がわからなくてもメロディーを口ずさめたかつての洋楽ヒット曲とは異なり、日本では浸透しにくい*2
「邦盤」云々について。一般社団法人 日本レコード協会HP「年次推移」
https://www.riaj.or.jp/f/data/annual/index.html を見ると、「生産実績・音楽配信売上実績」というのが別枠にあるから、音楽配信を含まないデータのようだ。「生産実績 過去10年間 オーディオレコード全体」
https://www.riaj.or.jp/f/data/annual/ar_all.html もご覧あれ。なお、「日本レコード協会規格 RIS 204- 2021 オーディオCDの表示事項及び表示方法」(1989 年 6 月 30 日制定、2021 年 5 月 1 日(最終)改正)
https://www.riaj.or.jp/f/pdf/issue/ris/ris204.pdf によると、「邦盤(国内原盤)」、「洋盤(外国原盤)」と定義されている。洋盤の部分はストリーミングサービスを使う人が多そうである。筆者はK-POPをよく聴くが、大半が洋盤になる。
「ヒップホップ」云々について。「速射砲のようなラップ」なので「日本では浸透しにくい」という趣旨であり、それで正しいのだろうが、「社会問題などを歌う」から浸透しにくいとすると、日本の特徴が表れているかもしれないと思った。唐突だが、筆者は最近、金時鐘/佐高信『「在日」を生きる ある詩人の闘争史』(集英社新書、2018)を読んだが、金時鐘は演歌と私小説を非難している。筆者が読んだ限りでは、どちらも社会問題を扱わないものとしているので、社会問題を芸術に取り入れるのを日本の人は嫌がるのかもしれないと思ったが、それと共通してる可能性がある。先ほど筆者は「K-POP」と書いたが、日本の場合は「邦盤」が売れている可能性が高いとも思った(蛇足だが、BTSはヒップホップグループである)。
いろいろとりとめもなく書いたが、「ニュースの門 ロックは今や中高年のもの?」の面白かったところは、①洋楽と言えばアメリカのイメージを筆者は勝手に持っていたが、イギリスのアーティストが意外と人気があることがわかったことと、②ヒップホップが仮に日本で浸透しにくいということがあるとすれば(もっとも、BTSのように「邦盤」でカウントされている可能性が高いのもある)日本独特の傾向があるかもしれないと思ったことである。