清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

「批判するな 対案を出せ」 なぜ悪い?

 筆者の印象論だが、最近は、「批判するな。対案を出せ」というのがブームのように思う。しかし、これはダメらしい。

 

 最近読んだ、戸田山和久『教養の書』(筑摩書房、2020)のpp.342-343に、アンチシュロギスモスとエンスタシスの違いが書かれており、それがわかりやすかった。すなわち、「アンチシュロギスモスとは、相手の主張と反対の主張を論証すること」*1で、「エンスタシスは、相手の論にツッコミを入れて、それが成り立たないことを示すタイプの反論だ」*2とある。

 

 戸田山さんによると、「アンチシュロギスモスは、相手の主張と対立するだけで、相手の主張を崩すことができない」*3という。一方、エンスタシスは、「アンチシュロギスモスと異なり、これが成功すれば相手に主張を取り下げさせることができる。あるいは相手の論証を促すことができる。これを互いに繰り返すことによって、もしかしたら正解に近づけるかもしれない」*4

 

 筆者が引用したところを筆者が最初に読んだとき、「批判するな。対案を出せ」がなぜ悪いかわかった。対案を出しても相手の主張を崩すことができない一方、批判が成功すれば相手の主張がわかる可能性が高まるからである。もちろん議会では議席数の問題がある*5のでそれほどうまく行かなくても、法律案を出す側*6の問題点がメディアを通じて伝わる可能性がありそうだから、対案より批判の方がよさそうである。

 

 というわけで、「批判するな。対案を出せ」という声が挙がった時は、無視した方がよさそうだ。

*1:『教養の書』p.342。オリジナルはアリストテレス『弁論術』とあるが、筆者は未確認。

*2:『教養の書』p.343。

*3:『教養の書』p.342-343。

*4:『教養の書』p.343。

*5:たいてい与党が多くて野党が少ない。

*6:たいてい政府・与党側だが、野党側の場合もあるし、超党派の場合もある。