清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

アーティスト メジャーになって ナンボかな

 読売新聞2022年7月2日統合版12版11面に、「吉田拓郎 全曲が充実 76歳『ラストアルバム』」という見出しがある*1吉田拓郎さんの「ah-面白かった」が、吉田さんのラストアルバムになる模様。たしかフォーライフ・レコードを設立した人だが*2、最後のアルバムは「エイベックス*3」から出した*4

 

 申し訳ないが、筆者は吉田拓郎さんの曲をほとんど聴かない。それにも関わらずエントリーしようと思ったのは、以下の引用部分ゆえである。

 

 (前略)「フォークシンガーと話をしていても話は合わなかった。彼らは、『マイナーでいい』って言う。でも、僕は大きな夢があった」

 

 ディラン*5たちが、音楽でアメリカンドリームをつかむ姿が憧れだった。(略)フォークのリスナーはそれを許さなかった。

 

 「ギター一本でプール付きの豪邸に住むって、広島を出てきた。でも、客は『四畳半に住んでろ』と怒る。日本武道館のライブ。観客総立ちで『帰れ』と言われた。そんなバカな、です。1人よりも10人‐1000人よりも1万人に聴いてもらいたいし、それで豊かな生活を送りたかった」(以下略)

  -読売新聞2022年7月2日統合版12版11面「吉田拓郎 全曲が充実 76歳『ラストアルバム』」より

 

 大多数の読者からすれば当たり前だと思うだろうし、現在の筆者もそう思う*6。しかし、かつてはそう思わなかった。かつての考えに影響を与えた記事を以下に引用しつつ紹介する。それは『シンコー・ミュージック・ムック I LOVE J-POP ジャパニーズ・ドリームvol.4』(シンコー・ミュージック、1999)に所収されている、富澤一誠*7「俺が言う "志から入った歌"と"マーケティング・リサーチから入った歌"とではまったく違う。要は"志"があるかどうかが大切なんです。」(pp.190-191)である。富澤さんは、以前NACK5などで放送されていた「JAPANESE DREAM*8のパーソナリティーで、当時のJ-POPファンだった筆者にとって、チャート上位の音楽では不満だったJ-POPの隠れた情報源だった*9

 

"志"のある歌とは?

 吉田拓郎井上陽水(略)などかつてのフォーク、ニューミュージックのアーティストと、小室系など現在のアーティストの大きな違いは、"志"があるかどうかということです。拓朗、陽水たちに共通していることは志があったということです。自分の中に表現したい何かがあった。だから、その何かを自分の言葉で曲で肉声で表現したんです。ところが、今は歌いたいことがないのに、お金が儲かるかもしれないとか、有名になりたいとか、そういうことで歌っている。(略)歌でなくてもいいんです。たまたま歌にしかすぎない。しかし、拓郎、陽水たちは歌でなければだめだったんです。

 

 大ざっぱに言えば、拓郎、陽水たちは"志から入った歌"、小室系*10は"マーケティング・リサーチから入った歌"ということです。(略)特に小室系のうたはターゲットがはっきりしていますから、マーケティングしておいて、そこを狙っているわけです。だから、狙い撃ちができる。でも、逆にそれ以上に広がりはないんです。一方、拓郎、陽水系はどの出口にでるかわからない。だが、志がある分、聴き手のハートへの浸食度は強いわけです。だから、彼らのファンはいつまで経っても彼らのファンなんです。

 

 -「俺が言う "志から入った歌"と"マーケティング・リサーチから入った歌"とではまったく違う。要は"志"があるかどうかが大切なんです。」(『シンコー・ミュージック・ムック I LOVE J-POP ジャパニーズ・ドリームvol.4』(シンコー・ミュージック、1999)』)

 

 最初に読んだときは上記引用部分に感動したものだ。いま改めて引用してみると、小室系は、たまに聴くと懐かしいが、それほど心に残っていないので、富澤さんの見解も一理ある。

 

 しかし、拓郎さんの志が、たくさんの人に自分の音楽を聴いてもらって、お金を稼いで、「『ギター一本でプール付きの豪邸に住む』」*11ことだったとは。「お金が儲かる」*12ことが志と知ったら、富澤さんはどう思うのだろうか。

 

 なお、小室系が出たので蛇足を述べると、「シティポップの次は『小室サウンド』が再ブームとなる」と松任谷由実さんが予想しているという*13。あり得るが、筆者は重量感を感じないので乗り気ではない。

*1:読売新聞オンラインでは「吉田拓郎76歳、今も消えぬ“ギターだこ”…『音楽はやっぱり最後まで一緒にいる存在ですよ』」(2022年7月3日8時12分)。

https://www.yomiuri.co.jp/culture/music/20220701-OYT1T50136/

*2:読売新聞2022年7月2日統合版12版11面により。

*3:Amazonで「ah-面白かった」を検索したところ、avex traxから出したとのこと。

*4:理由を詮索しなくてもよい。レコード会社の移籍など普通のこと。

*5:ボブ・ディランさんのこと。

*6:仮説だが、どの分野でも、古典やスタンダードとされるものは、発表当時売れた、または反響がすごかったものが多い。

*7:ウィキペディア富澤一誠」も一読されたし。

https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AF%8C%E6%BE%A4%E4%B8%80%E8%AA%A0

*8:番組内容はウィキペディアJAPANESE DREAM」で確認。

https://ja.wikipedia.org/wiki/JAPANESE_DREAM

*9:といっても、番組を毎週聴いていたわけではなく、ある雑誌に出る(雑誌の名前を失念している)JDチャート立ち読みでチェックしていた。なお、「JAPANESE DREAM」については、筆者は以前記事にしている。「ジャパニーズ ドリーム今も やってたの!?」(

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/53922132

)をご一読。

*10:書かずもがなだが、当時隆盛を誇っていた、小室哲哉さんがプロデュースしたアーティストのこと。

*11:読売新聞2022年7月2日統合版12版11面に、「吉田拓郎 全曲が充実 76歳『ラストアルバム』」

*12:「俺が言う "志から入った歌"と"マーケティング・リサーチから入った歌"とではまったく違う。要は"志"があるかどうかが大切なんです。」

*13:読売新聞2022年6月28日統合版宮城12版19面「ラジオON! 小室哲哉と11年ぶり対談」。