今週のお題「最近おもしろかった本」
ソルジェニーツィン『収容所群島』(ブッキング、2006。全6巻)ですかね。
筆者未読だが、2020年の新書大賞は大木毅『独ソ戦』(岩波新書、2020)だった。ドイツというか、ナチスの悪事は全世界的に有名になったが、ソビエト社会主義共和国連邦(ソ連)の悪事というのはなかなか広がらなかった。『収容所群島』では、矯正労働収容所のみならず、特殊収容所、徒刑囚を描き、いかにソ連の内実がでたらめだったかを、著者の体験、ならびに囚人からの手紙等を用いて明らかにした本である。
ここでは社会主義と共産主義の定義を厳格にはしないが、社会主義や共産主義を革命において採用した国には、でたらめなことが起こると認識させられた。文化大革命しかり、カンボジアのポル=ポトしかり。初期の矯正労働収容所において、無頼漢が政治犯を支配するさまにもそれを感じた。階級がなくなれば犯罪がなくなるということで、結果が無頼漢がそうでない人を虐げるというのだから、びっくりである。
『収容所群島』のところどころに出てくるのが、気に入らない人を「ファシスト」とレッテル貼りすることである。昨今のロシア共和国によるウクライナ共和国の侵略でも似たようなことがあったので、ロシアの伝統なのだろう。日本で言えば「アカ」になるかな。
ロシアに対しての見方が変わるというか、筆者の場合、ロシアに対する見方がまともになった*1感じである。だからと言って、ロシア人一般を差別しないように注意しなければならないけど。ロシアの政治が問題なのは昔からだということがわかる。
なお、社会主義は、世界中で失敗し、迷惑をかけているわけでもない。社会主義政党が存在感を示しているのは、社会民主主義を採用している国が強くなった場合のように思える。詳しくはコトバンク「社会民主主義」をご一読。
https://kotobank.jp/word/%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E6%B0%91%E4%B8%BB%E4%B8%BB%E7%BE%A9-75720
『収容所群島』は、現在新刊で流通していない(筆者調べ)。事情があるのだろうが、世界を知るうえで重要な本だと思うので、ぜひ新刊で流通させてほしい。ブッキングの現在は復刊ドットコムのようなので、復刊ドットコムの英断を期待したい。というわけで、『収容所群島』は、借りて読んだ。