2月22日*1は猫の日? それもあるが、竹島の日である。というわけで、竹島or独島*2について。
筆者調べで、2023年2月22日に、主要新聞*3で竹島の日について社説にしたのは、保守系と目される*4、産経新聞と読売新聞である。
①産経新聞2023年2月22日社説「主張 竹島の日 領土守る明確な意志示せ」
②読売新聞2023年2月22日社説「竹島の日 外交戦で韓国*5に後れを取るな」
産経新聞には申し訳ないが、本記事では②を中心に検討する。
日本は、江戸時代の17世紀半ばに竹島の領有権を確立した。(中略)
この部分がおかしい(否定的に)ので、②を中心に検討するのである。江戸時代に竹島の領有権を確立したのになんで1905年に竹島を編入しなければならないの? また、1905年って、第2次日韓協約を締結した年なので、異議を唱えても通る状況ではないことくらい、知識があればわかることである。コトバンク「日韓協約」をご覧あれ。
竹島問題について、日本は過去3回、国際司法裁判所への付託を提案したが、韓国はいずれも拒否した。当事者双方の合意がなければ、裁判所での審理はできず、交渉は暗礁に乗り上げたままだ。(②)
それは仕方のないことである。なお、国際司法裁判所の強制管轄については、日本は受諾しているが、六者協議*6に参加した国で強制管轄受諾宣言*7をしているのは唯一日本である。すなわち、韓国がしていなくてもどうということはない状況である。
というわけで、現在は、先ほどの引用のように、「竹島問題について、日本は過去3回、国際司法裁判所への付託を提案したが、韓国はいずれも拒否し」(②)ている状況である。しかし、これは、実際に決着をつけるよりも望ましい状況かもしれない。筆者が愛読しており、また、標準的な教科書の一つと認識している、松井芳郎ら『国際法[第5版]』(有斐閣Sシリーズ、2007)pp.122-123によると、
1996年に入り、韓国と日本は国連海洋法条約を批准した。それに伴い、両国は、1998年11月に日韓漁業協定*8を締結し、両国の排他的経済水域の境界となる漁業暫定線を引くとともに、竹島の帰属問題は棚上げにし、同島周辺では両国国民が相互に漁業活動に従事し得る暫定水域を設けることに合意した
とあるので、協定違反が起こらなければ現在の日本人にとって致命的な影響があるようには見えない*9。一方、実際の審理になったら、竹島として日本領土になるかは、わからない。現状では韓国は国際司法裁判所への付託に応じていないので、応じてもらうためには妥協が必要なはずである。日本の立場としては国際法上有利と仮定すると、それで韓国が応じないならば日本が妥協して応じてもらおうとするしかないであろう。具体的には、国際司法裁判所規程第38条第2項にある「衡平と善」を用いることとするのである。そうなると、日本の立場が通るかは、筆者が思うに、わからない。
というわけで、現在のように、日本が騒いでいるくらいが、日本にとって一番いいというのが、筆者の認識であるが、いかがだろうか。
https://ja.wikipedia.org/wiki/2%E6%9C%8822%E6%97%A5
*2:筆者は日本在住の日本人なので、日本の立場を左(先)に、それに反対する立場を右(後)にした。
*3:あいうえお順に、朝日、産経、東京、日本経済、毎日、読売。
*4:筆者が持っているイメージ。
*5:本エントリーにおいて、国名は、筆者が通用していると認識している略称を用いる。
https://kotobank.jp/word/%E5%85%AD%E8%80%85%E5%8D%94%E8%AD%B0-663345
で意味を確認。厳密に調べてはいないが、日本以外の参加国は、北朝鮮の領土を朝鮮半島全体とすれば、すべて日本の隣国である。
*8:広義の条約であるから、条約と名付けられたものと同一の効力である。『国際法[第5版]』p.27参照。
*9:もっとも、韓国も漁業活動ができるので、その点での影響は否定できないが。