某日、筆者は、以下のツイートを読んだ。東洋経済新報社解説部・記者の劉彦甫が2023年3月17日19時27分にしたツイート。
下記引用した劉先生の一連のツイートは私も同感です。日本のリベラル知識人と接していて毎回感じるのは台湾情勢に対するあまりの無理解とそれに伴う台湾社会2300万人の民意を無視する態度。平和が大事と主張するくせに平和を実践する当事者の話を全く聞きも理解もしない。呆れ返って応援できなくなる。 https://t.co/jCiIlPcHNC
— 劉彦甫 (@LIU_Yen_Fu) 2023年3月17日
筆者は「リベラル知識人」でもないのに、なぜかピンと来たので、台湾の本を読むようになった。
紆余曲折の末に、以下読書順に、大東和重『台湾の歴史と文化(略)』(中公新書、2020。)、伊藤潔『台湾(略)』(同、1993。ただしブログアップ時点で読了していない)を読んだ(又は読んでいる)*1。そのうち、伊藤潔『台湾(略)』から、以下において2点引用する。
日本の台湾統治に対して最大級の賛辞を呈したのは、ほかでもない中華民国政府(国民党政権)が、1937年*2に刊行した『台湾考察報告』なる報告書である。*3
まず、筆者の調査不足もあるかもしれないが、前者について、朝鮮半島の植民地支配に対して「最大限の賛辞を呈した」ものを筆者は知らない。
次の台湾人の国籍の話は、筆者の記憶に反する。筆者が理解しているのは、1952年4月19日付け法務府民事甲第438号法務府民事局長通達によって、朝鮮籍と台湾籍の人が日本国籍を喪失したことである。日本国籍のなしくずし剝奪を許さない会HPの下記アドレスからアクセスされたし。
http://www.kokuseki.info/kitei/tsutatsu/1952-04-19.html
これはどういうことなのだろう? ①中華民国は既に存在したので1945年に中華民国国籍となり、日本国籍はその後に離脱した。②一方、朝鮮半島は新たに国を作ることとなったので朝鮮籍の人は無国籍状態になったということなのだろうか。
このように、清から割譲された台湾と、大韓帝国を併合した朝鮮半島(現在は大韓民国と、朝鮮民主主義人民共和国が、朝鮮半島唯一の合法政府を争って戦っているが、休戦中)という違いがあって、扱いが違うように見えるのである。
最後に、共通と思われるところを一つ。
三・一独立運動における上海臨時政府*7に似ている。しかし、朝鮮半島は独立を果たしたが、台湾はそれを認めない国が多数であるという違いがある。
(2023年4月24日追記)
台湾人の国籍の話について。もう皆さんは知っているだろうが、筆者のまとめにお付き合いを。
『台湾(略)』(伊藤潔、中央公論社、1993)p.138に以下の記述がある。
台湾の領有権の変更に関する国際条約もないまま、素早く台湾を中国(国民党政権の。筆者補足)の「台湾省」としたのは、カイロ宣言に依拠しての事であった。
https://kotobank.jp/word/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AD%E5%AE%A3%E8%A8%80-43075
)の、ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の説明がよくまとまっているので、引用してみよう。
日本の領土問題に関する方針などは,45年のポツダム宣言に取入れられ,日本によって受諾された
書くまでもないのだろうが、「宣言」だから条約ではない、とはならず、ポツダム宣言を受け入れたことによってカイロ宣言も受け入れたことになり、台湾の領有権が終戦後すぐに中華民国になったということのようである。日本政府は1952年4月19日付け法務府民事甲第438号法務府民事局長通達で、二重国籍状態だった(可能性がある)在日台湾人の日本国籍を喪失させたということで、矛盾はないのだろう。筆者の理解が甘いという批判は甘受するが、現在の筆者の認識は以上の通りである。