清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

産経読売 皇室典範で 崩壊?

1.日本で保守と目される*1産経新聞と読売新聞が、女子差別撤廃委員会から、皇室典範について「皇統に属する男系の男子のみが皇位を継承することを認めることは、条約第1条及び第2条と相容れず、条約の目的及び趣旨に反すると考える」(外務省."女子差別撤廃条約第9回報告に対する女子差別撤廃委員会最終見解(未編集版 仮訳(PDF)".女性:女子差別撤廃条約.

https://www.mofa.go.jp/mofaj/files/100762773.pdf

,(参照2024-12-10).としたことについて、感情的に反発している。以下、その根拠と、私見を記したい。

 

2.産経新聞

 

 ①"<主張>皇位継承への干渉 政府は国連の暴挙許すな".産経新聞.2024-11-01.

www.sankei.com

,(参照2024-12-10).によると、

…略…

女性差別」と関連付けた勧告は誤りと悪意に満ちた内政干渉であるのに加え、日本国民が敬愛する天皇への誤解や偏見を内外に広める暴挙で断じて容認できない。

…略…

抗議と削除要請は当然だが、それだけでは不十分だ。削除に至らなければ、国連への資金拠出の停止・凍結に踏み切ってもらいたい。条約脱退も検討すべきである。

…略…

最終見解では、夫婦同姓を定めた日本の民法も「差別的な規定」とし、選択的夫婦別姓の導入を勧告した。これも日本の文化や慣習に無理解かつ傲慢な内政干渉というほかなく、女性差別という誤った文脈で語られるのは許されざることだ。

という。社説執筆者の顔が真っ赤になるさまが想像できそうである。しかし、「内政干渉」も何も、日本が条約を締約しているから審査されるのである。「ローマ教皇には男性が就くが、バチカン市国は締約国でないため勧告対象から外れている」*2の裏の話である。

 

②田北真樹子."サンデー正論:国連で戦っている民間人たち 「捏造で日本が潰される」".産経新聞.2024-11-24.

www.sankei.com

,(参照2024-12-10).もよく分からない感情的反発である。

女性差別撤廃委員会で特定失踪者問題を取り上げるのは、特定失踪者には若い女性が多いからだ。特定失踪者問題調査会の18年の調査によると、名前を公開している拉致の疑いのある失踪者は546人。うち151人が女性で、その9割が10~30代だという

とのことだが、どう「女性差別*3なのか、判然としなかった。

 

3.読売新聞編

 

①"皇室典範に勧告 歴史や伝統を無視した発信だ".読売新聞オンライン.2024-11-05.

www.yomiuri.co.jp

,(参照2024-12-10).によると、

 皇位継承のあり方は、国家の基本にかかわる事柄である。その見直しを国連の名の下に、付属機関で活動している個人が要求してくるとは、筋違いも甚だしい。

…略…

 王室や皇室のあり方は、それぞれの国の伝統や国柄が反映されており、尊重されねばならない。

 委員会は、23か国の専門家で構成されている。今回の勧告は、ネパールの委員がまとめたものだ。勧告に法的拘束力はないが、この発信は、あたかも皇室典範女性差別があるかのような誤った印象を広げる恐れがある。

 政府が委員会に抗議し、皇室典範に関する記述の削除を求めたのは当然だ。国際社会に対し、勧告が日本の皇室制度の特徴を何ら理解せず、誤解に基づくものだと説明していくことも欠かせない。

 そもそも憲法は、天皇の地位について「国民の総意に基づく」と定めている。皇室をどう安定的に維持していくのかは、国民が考えて決めるべき問題である。

 勧告はまた、選択的夫婦別姓の導入も注文した。

 法制審議会が1996年に選択的夫婦別姓の導入を答申して以来、国内ではその是非について議論が続いている。先の自民党総裁選でも論戦のテーマとなった。

 夫婦が別々の姓を名乗ることになれば、社会や家族のあり方に大きな影響を及ぼす。子供は、父親か母親と別の姓になるという問題も無視できない。導入の是非については慎重に検討すべきだ。

 このほか委員会は、日韓両国が2015年に「最終的かつ不可逆的な解決」を確認した慰安婦合意について、賠償請求への対応を求めた。かつては合意自体を「解決していない」と否定していた。

 合意に基づき、日本政府は、韓国が設立した元慰安婦支援のための財団に10億円を拠出した。その財団から、多くの元慰安婦が支援金を受け取っている。

 2国間の合意にまで口を出すとは、あきれてものが言えない。

という。

 

 2024年11月5日の社説を書いた人は、今頃この世にいないのだろう。尋常ではない感情的反発のみが伝わってくる。

 

 天皇は人間であり、人間社会であれば女性も継承できるのは当然のことだから、"女子差別撤廃条約第9回報告に対する女子差別撤廃委員会最終見解(未編集版 仮訳(PDF)".の方に理があるのは言うまでもない。夫婦別姓について「導入の是非については慎重に検討すべきだ」*4とあるが、法務省だって「法務省が把握する限りでは、結婚後に夫婦のいずれかの氏を選択しなければならないとする制度を採用している国は、日本だけです」*5と言っているのだから、速やかに導入すべきである、としか言えないだろう。「2国間の合意にまで口を出すとは、あきれてものが言えない」*6という文章の方があきれてものが言えない。というのは、女子差別撤廃条約第18条第1項に「締約国は、次の場合に、この条約の実施のためにとった立法上、司法上、行政上その他の措置及びこれらの措置によりもたらされた進歩に関する報告を、委員会による検討のため、国際連合事務総長に提出することを約束する」とあり、「2国間の合意」*7を排除する理由がないからである。

 

②"[スキャナー]皇室典範への改正勧告、不透明な国連委審査…皇位継承の理解度も不明".読売新聞オンライン.2024-11-22.

www.yomiuri.co.jp

,(参照2024-12-10.ただし、「『読者会員』『読者会員(家族)』限定」とのことで、以下の記述においては、類似の記事と思われる、読売新聞2024-11-22統合版13版3面の記事、"国連委審査 透明性欠く"からの引用とする。

 

国連人権委員会(現国連人権理事会)は…略…米ヘリテージ財団は、活動に偏りがあるとして同理事会の体制見直しを求める報告書を出している

とあるが、皇室典範について言及しているのは女子差別撤廃委員会であり、「国連総会の下部機関」*8である人権理事会の話ではない。

 

拠出金 影響か

の見出しもズレている。本文には「中国は米国の思惑が反映されている可能性がある」*9とあるが、米国は女子差別撤廃条約の締約国ではない*10から、関係ない。

 

4. 産経新聞も読売新聞も、日本が締約した条約を根拠とした委員会から勧告されたからといって、ここまで壊れてしまうとは。もう少し国際法や国際人権法を勉強してから書くべきであろう。

*1:ただし、筆者の私見にすぎないが。

*2:"<主張>皇位継承への干渉 政府は国連の暴挙許すな".

*3:田北真樹子."サンデー正論:国連で戦っている民間人たち 「捏造で日本が潰される」".

*4:"皇室典範に勧告 歴史や伝統を無視した発信だ".

*5:法務省."選択的夫婦別氏制度(いわゆる選択的夫婦別姓制度)について".

https://www.moj.go.jp/MINJI/minji36.html#Q12

,(参照2024-12-10).

*6:*4に同じ。

*7:*4に同じ。

*8:外務省.人権外交:人権理事会.2023-10-16.

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/jinken_r/index.html

,(参照2024-12-10).

*9:"国連委審査 透明性欠く"

*10:外務省.人権外交:女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約
(Convention on the Elimination of All Forms of Discrimination against Women)
締約国一覧.2020-11-20.

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/josi/3b_001_1.html

,(参照2024-12-10).なお、米国は署名しているが、署名のみでは「条約の実効は義務ではありません」(ユニセフ."用語の解説".

https://www.unicef.or.jp/kodomo/nani/history/hi_s2.htm

,(参照2024-12-10).