清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

除斥期間の 判例変更 すべきだよ

今日の読売新聞朝刊(東京本社版第13版34面(仙台では))によると、足立区の女性教師殺人事件で、刑事訴訟法上の公訴時効が成立したあとに犯行を自供した元警備員(1978年殺害、26年後自供。当時の殺人罪(刑法第199条)の公訴時効は15年(刑事訴訟法第250条第1号。平成16年の改正で25年)なので、1993年に時効が完成)に対して、女性教師の遺族が損害賠償の請求をしているが、男が除斥期間民法第724条後段)を主張しており、請求が認められるかわからない状況だという。

まず、除斥期間というのは法律には書いてない講学上の概念だが、要は、一定期間が過ぎれば請求は一切認めないということである。時効(民法724条前段など)との大きな違いは、時効は当事者の援用(「時効が成立している」という旨の主張)がなければ、裁判所がこれによって裁判することができないが(民法第145条)、除斥期間は当事者の援用がなくても(裁判所が勝手に)、裁判することができるということである。最高裁判所判例によれば(最高裁判所判決平成元年12月21日民事判例集43巻12号2209頁)、除斥期間である以上は、期間が経過すれば裁判所は職権で損害賠償請求権の消滅を認定すべきであるから、「信義則違反(民法第1条第2項)・権利濫用(民法第1条第3項)の主張は、主張自体失当であ」るので、除斥期間後の損害賠償の請求は一切認めないのが原則となる(もっとも、最高裁判所判決平成10年6月12日民事判例集52巻4号1087頁では、「民法158条の法意に照らし、同法724条後段の効果は生じない」とし、除斥期間を制限的に適用する傾向にもある)。とすると、今日の新聞に載っていた事例は元警備員の主張が認められ、遺族の損害賠償請求は認められなくなる可能性が高い。

もっとも、この結論は素人(マスメディア等。失礼)でも学会でも批判が強い。たしかに、法的関係の安定のために除斥期間の概念は必要なのかもしれないが(20年以上経って突然不法行為による損害賠償請求を提起されたところを想像してください。反証するのは難しいのではないか)、裁判所が原告の請求を退けていいというのは極論であろう。原告の信義則・権利濫用の主張を認め、柔軟かつ妥当な解決に努めるべきである。

なお、除斥期間そのものを廃止すべきという主張もあろうが、たぶん無理だろう。裁判所はこの規定を楯に第2次世界大戦の被害者の請求を退けているからである。こんな都合のいい条文を廃止することは考えられない。

参考文献
内田貴民法供拇豕?膤惱佝撚
民法判例百選矯銚◆並茖吉如僕斐閣