清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

問われてるのは 迅速化じゃなく 死刑だよ

今日の読売新聞の社説(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20070308ig91.htm
の1つは、東京高等裁判所オウム真理教元代表控訴審担当の弁護人(弁護士)2人に懲戒請求を出したことについて。内容は、弁護人のやり方(元代表心神喪失だとして,控訴趣意書を提出しなかったこと)は、現在要請されている裁判の迅速化に著しく反することだから、所属弁護士会は、厳しい処分にすべきだというもの。だいたいの人にとって、この社説は妥当だと思っているだろうが、本当に妥当なものか、以下検討する。

1、まず、東京高等裁判所懲戒請求をしたこと自体は問題ない(弁護士法第58条第1項で、「何人も」「懲戒することを求めることができる」から)。

2、一般論として、高等裁判所の判決に特に問題はない。刑事訴訟法第386条第1項第1号によると、「裁判所の規則で定める期間内に控訴趣意書を控訴裁判所に差し出さなければ」(同第376条第1項)、控訴裁判所は、決定で控訴を棄却しなければならないからである。一方、弁護士のやり方には問題がある。この規定がありながら、あえて提出しなければ、裁判が終了してしまうことは予見できるからである。

3、しかし、今回の場合は、高等裁判所のやり方が妥当だとはいえない。なぜかというと、この事件では死刑が争われているからである。市民的及び政治的権利に関する国際規約第6条第4項によると、「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦または減刑を求める権利を有する」が、今回の判決だと、死刑を言い渡された者が死刑の是非を争う機会を奪うことになってしまうからだ。すなわち、前述の規定から直接には導き出せないが、確定しても特赦や減刑を求める権利があるのに、確定していない場合に死刑を争う機会を一方的に奪うのは良くない、ということである。

4、一方、弁護側の控訴趣意書の未提出が「審理の引き延ばしが狙いだった」としても、それが一概に悪いとは言えない。生命に対する抵抗権ということで正当化することが不可能ではないからである。

5、以上のことから、今回の事件では、弁護人の行為にも問題はあったが、それより、東京高等裁判所のほうに問題があると考える。もっとも、このことが、所属弁護士会の懲戒処分に影響を及ぼすものではないのは、言うまでもない(過去の事例も考慮されるだろうから)。