最近、立ち読みで目に付いた記事を2つ。
1、某コンビニで渡邉美樹さんの著作があったので(著書の名前は忘れた)、パラパラとめくってみると、「ニートは憲法違反」との太字が飛び込んできた。たしかに、憲法第27条には、「勤労の(中略)義務を負う」と書かれているので、働いていないニートは憲法違反と言えなくもない。しかし、それでよいのかどうか、以下において検討する。
(1)そもそも憲法というのは、国家権力を制限するための規範なのだから、私人であるニートだけを憲法違反として問題とするのは筋が違うのではないか(原則として、国家権力の行為を問題とすべき。もっとも、私人間効力の問題もあり、私人の行為が憲法違反に問われることもある)。
(2)仮に憲法違反としても、以下の疑問がある。
,修譴覆蕕弌求職者、35歳以上の無職の方も憲法違反になるが、それでいいのだろうか。年金をもらえる人も勤労の義務を果たしていないのだから当然憲法違反ですよね。
憲法違反だとしても、どうしようもないだろう。犯罪者は別だが、犯罪者でもないニートを強制的に働かせようとすると、それこそ憲法第18条違反である(「その意に反する苦役に服させられない」)。
それでは、渡邉さんはニートを憲法違反だと主張する利益はあるのか。結論から言うと、ないと考える。というのは、(ア)ニートは税金を払っていない(憲法第30条参照)わけではないから(消費税の形式で払っている)、(イ)渡邉さん、ならびに「和民」の立場からすれば、「和民」に来てお金を払うことが大事だから、である。仮にニートがいて税金が足りないとしても、それなら渡邉さん、ならびに「和民」が税金を払えばいい。
(3)以上のことからすると、ニートは勤労の義務を果たしていないという意味で憲法違反とは言えるかもしれないが、渡邉さんの主張は、憲法を理解していない((1))、他の人を考慮していない((2) 法⊆臘イ陵?廚ない((2)◆↓)、以上3点によりおかしいといえる。
(4)それでは、憲法第27条第1項の「勤労の(中略)義務を負う」とは何か。それは、働かない人の生存権を保障しないということである。しかし、病気のニートは当然保障されるし、突然働く気を起こしたニートも保障されるので、議論の実益はない。
2、今日は週刊文春の発売日(5月3・10日ゴールデンウィーク特大号)。早速立ち読みすると、奥谷禮子さんの記事が載っていた。彼女は以前「過労死を含めて、これは自己管理だと私は思います」などと発言して、物議をかもした人だが(右記のウィキペディア参照。http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E5%A5%A5%E8%B0%B7%E7%A6%AE%E5%AD%90&oldid=12124057)
、週刊文春の記事はどんな記事だろうか。
(1)まず、この記事の全体の趣旨は、奥谷さんの人柄の良さと、発言を載せているものであることをお断りしておく。
(2)しかし、記事、ならびに奥谷発言の内容はおかしなところがある。以下、検討する。なお、あまりにもおかしいので買わなかったため、若干表現が違う場合もある。
,泙困狼事のほうだが、「フリーターは怠けている」とのこと。はっきり言って間違い。フリーターは「アルバイト、パートと呼ばれている15歳から34歳までの者」というのが(厚生労働省の)大まかな定義であり(私は内閣府の定義、すなわち契約社員や派遣社員も含むほうが、非正規効用の問題の本質を突いていると思う)、怠け者と言う意味はない。事の本質は、使用者側がアルバイト・パートとして申込を誘引しているということなのである(労働条件を提示しているのはあくまでも使用者側)。
△海海らは奥谷さんの発言。ホワイトカラー・エグゼンプションについてまたたわごとを。すなわち、「働く時間の個人の自己管理を認め、できる人材にはそれだけの報酬を支払うのは当然のこと」。それならば、それだけでなく、労働時間の上限も設けることも提言すべきだろう(時間規制撤廃で心配されるのは長時間労働)。
最低なのは以下の言葉。すなわち、「仕事があるのに意欲がなく、漫画喫茶で一日中寝ている人にただ税金を出して支援するのは、不公平」のくだり。
(ア)まず、「仕事があるのに意欲がなく」のくだり。仕事があってもやりたくないというのはいけないのか。憲法第22条第1項に職業選択の自由があるのだぞ。
(イ)たぶん奥谷さんは、昼間に漫画喫茶に行ったのか、または聞いただけだと思うが、「漫画喫茶で一日中寝ている人」のどこが「仕事があるのに意欲がない」のだろう。昼間に行ったのなら夜勤明けということは全然想像しなかったのか。それとも奥谷さんは漫画喫茶に「一日中」いたのか。いなければこんなことは言えないし、もしいたなら奥谷さんこそが「仕事があるのに意欲がな」いということになる。
(ウ)「漫画喫茶で一日中寝ている」ということは、何らかの事情で家がないということを考えなかったのか。また、その人が具合が悪いということを考えなかったのか。どうして他人を思いやれないのかな。
(エ)「税金を出して支援する」というのは、たぶん生活保護のことだと思われるが、収入が少なくて生活が苦しい人が生活保護を受給して何が悪いのだろうか。
(オ)漫画喫茶で寝ているの話を聞いたり読んだりしたことがあるが(雨宮処凛『生きさせろ!難民化する若者たち』は素晴らしい本なので、一読されたし)、その原因の一つが、(部屋を借りられるほどの)十分な収入がないことである。そしてその原因は、企業が短期(1日というのもある!)の派遣やアルバイトなどで人件費をケチっていることなのである。奥谷理論では、なら起業せよ!ということになろうが、全員が起業して報われたら経済は活性化するのか。実際はそんなこと(全員起業、報われること両方)はないので、失敗した人は仕事を探すこともあろうが、そのときにアルバイトや短期派遣しかなかったらどうするのだろうか。言いたいことは、全員が起業を目指すのも都合が悪く、経済が活性化するにはある程度労働者も保護されなければならないということである。
(3)以上、(2) 銑より、奥谷さんの発言は全く不当である。
3、週刊文春の同じ号によると、奥谷さんは「地獄に落ちろ」と書かれたそうだが、私はその言葉を彼女に加えてこの記事を書いたライターさん、ならびに週刊文春に送りたい。ついでに渡邉美樹さんにも。