清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

心神喪失 物議を醸す この概念

1.最初に
宮城県のニュースですが、内容は全国レヴェル(どこでも通用する)ですので、「社会感想戦」の書庫に収めます。

2.それでは、本題。
昨日、宮城県大郷町で11歳の女児が刺され、56歳の、精神科に通院歴のある男が逮捕された(読売新聞7月21日朝刊社会面35頁参照)。

逮捕された男は、精神科に通院していることに加え、取調べにおいて訳のわからないことを言っているようなので、この事件は、刑事上は不起訴(起訴しても心神喪失で無罪の可能性があるから。刑法第39条第1項参照)、民事上でも損害賠償責任を負わないことが予想される(民法第713条参照。昔は「心神喪失」という用語を用いていた)。

どうして責任が問われない可能性があるのかというと、刑事法の世界でも、民事法の世界でも、非難可能性のない行為者の行為の責任を問うことが出来ないとされるからである。そのため、「事物の理非善悪を弁識するの能力なく、又はこの弁識に従って行動する能力なき状態」にある者(裁判所による心神喪失の定義。簡単に言えば、行為の意味がわからないか、わかってもそれに従って行動できない者。大審院昭和6年12月3日判決大審院刑事裁判集10巻682頁参照)は非難できないので、責任を問われないとされているのである。

しかし、被害者にとってはたまったものではないだろう。加害者がどうあれ、刑に服してほしいし、賠償してほしいだろうからである(民事に関しては民法第714条で監督義務者が賠償責任を負うことになっている)。だが、国家権力が強制するという観点からは、やろうと思ってもできない人に強制できないということなのだろう(だからといって、これがいいと思っているわけではない)。

私の文章では不足かもしれないが、おかしいと思うことでも、それなりの理由はあることを読者の皆さんに理解してほしいと思い、あえて書いた。

参考文献
大塚仁『刑法概説(総論)』(第3版) 有斐閣
内田貴民法供〆銚各論』 東京大学出版会
*なお、この両文献とも、最新版で確認されたし。