昨日発売(仙台では)の「週刊現代」9月1日号に興味深い記事があった。それは、「だから言わせろ!ニッポンはこう変えろ!!」のなかの、新谷弘実さんが書かれた「キレる若者、自殺する中高年は砂糖が生み出す」。
表題から見たら、キレる若者や、自殺する中高年が増えたのは、砂糖が原因であるということが書かれているように見え、その通りの内容だが、それに加えて、腸相の問題や、理想の食生活が書かれていた。
腸相は素人では反証不能だし、理想の食生活はそれなりにやってみようと思う内容ではある(根拠があるかは責任が持てないので他人には勧めない)。しかし、キレる若者や、自殺する中高年が増えたのは、本当に砂糖のせいなのか。
たしかに、特にキレる若者については、食生活が原因であるという説もあり、そのひとつが砂糖の過剰摂取にあると言われていることも承知している。
しかし、実際は、私も知らなかったのだが、砂糖の摂取量は減少(!)傾向にあるという。独立行政法人農畜産業振興機構の統計資料一覧の中の「砂糖 統計資料」の4.03「食品摂取量の推移」(http://sugar.lin.go.jp/japan/data/j_html/j_4_03.htm)
によると、昭和30年は1人1日当たり15.8グラムだったのが、昭和45年の1人1日当たり19.7グラムをピークに、平成16年には1人1日当たり7.1グラムまで減っているという(ついでに言うと、果実類は昭和50年をピークに増えたり減ったり、菓子類は昭和50年をピークに平成13年に増えて、その後少々減少、調味嗜好飲料は平成13年から劇的に増えている(平成13年度から分類が変更されている。例えば、ジャムは、砂糖・甘味料類から果実類に分類された)。これらの中には糖分を含むものがあるので、糖分全体の摂取が増えているか否かは断言しない)。
となると、キレる若者や、自殺する中高年が増えているとしても(男子の自殺率については「図録 年齢別の自殺率の長期推移(男子のみ)」(http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2760.html)
参照。自殺者数については「図録 失業者数、自殺者数の推移(月次、年次)」(http://www2.ttcn.ne.jp/~honkawa/2740.html)
参照。後者と「食品摂取量の推移」を併せて見ると、1998(平成10)年から自殺が増加傾向にあるのに対し、砂糖・甘味料類は1996(平成8)年から一貫して減少している)、
それらの現象が砂糖の摂取が原因だとはいえないだろう(他の原因を求めることは十分可能である)。
以上のように、データを見る限りでは、新谷弘実先生はトンデモ医師と断ぜざるを得ない。
私は、以前新谷先生が書かれた「病気にならない生き方」に感銘を受けた者である(コーヒーとアルコールがダメなので、ミラクルエンザイムの仮説を信じた)。しかし、データ無視のデタラメな見解を垂れ流すのでは、科学者(実は、アルバート・アインシュタイン医科大学外科教授)失格と言われても仕方がないだろう。新谷先生、このデータを覆すような詳細な研究を発表されてはいかがか。