清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

違憲判決 なんかどうという ことはない

自衛隊イラク派遣(のうち、「多国籍軍武装兵士を輸送する航空自衛隊の活動」)が憲法第9条違反だという判断が、名古屋高等裁判所で示されたという(中日新聞「空自イラク活動「違憲」 名古屋高裁判決」(http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2008041702004386.html)。

ただ、「慰謝料など請求そのものは棄却され」ているので、いわゆる傍論であり、社会的な影響は乏しいだろう。おそらく、国が上告しても、訴えの利益がなくて上告棄却となろうが、その場合には、憲法判断を避けるだろう。

憲法第9条の問題は難しい。仮に改正を前提とすると、軍事力である程度世界を動かせると思う反面、アメリカに従うがゆえに国家が破滅に陥る(財政面でも正義の面でも)ことも考えなければならないからである。

(追記―2008年4月18日)
今日の読売新聞1面を見ていると、「憲法判断回避の原則」という考え方を引きつつ、さらに傍論で憲法判断しているので、判決に疑問があるという趣旨の解説があった。

これ自体は目を開かせるものがあったが、本当にそうか、検討する。

たしかに、今回の違憲判決は、事例の解決に何ら貢献しない(6ページの判決要旨を見ると、違憲確認、差し止め、損害賠償、すべて認めなかった)ので、回避すべきということはできる。

しかし、憲法判断回避の原則を「絶対的なルールとして主張すると、違憲審査制の憲法保障機能に反する場合が生じる。そこで、裁判所は、事件の重大性や違憲状態の程度、その及ぼす影響の範囲、事件で問題にされている権利の性質等を総合的に考慮し、十分理由があると判断した場合は、回避のルールによらず、憲法判断に踏み切ることができると解するのが、妥当であろう」(芦部信喜憲法(新版補訂版)』岩波書店p342)という考えに一理ある。読売新聞の通りだと、事例の解決と関係なければ何でもしていいことになり、人権が守られないと思うからである(もっとも、芦部説だと、基準があいまいだという非難は免れないと思うが)。

この芦部説を前提として考えると、この判決は、特に「違憲状態の程度」を考慮し、十分理由があると判断したので、憲法論に踏み込んだのだろう。

次に、傍論についてだが、同様の事件が生じた場合に先例として扱われないという程度のもので、傍論を書いてはいけないわけでも、傍論で憲法判断してはいけないわけでもないのではないか。

以上の通りだとすると、今回の名古屋高等裁判所の判決は、事例の解決には結びつかないが、警告を発するためのギリギリの行為だったと思う(これが妥当かの判断は控える)。