YOMIURI ONLINE「「情報源は鑑定医」草薙さん認める…少年調書漏洩事件」(http://osaka.yomiuri.co.jp/news/20090114-OYO1T00558.htm)
によると、「奈良県田原本町の放火殺人事件で少年(18)の供述調書などを漏らしたとして、刑法の秘密漏示罪に問われた精神科医」「の公判が14日、奈良地裁(石川恭司裁判長)であ」り、「調書を引用した本「僕はパパを殺すことに決めた」の著者でフリージャーナリストの草薙厚子さん(44)が(証人として。清高注)出廷」し、精神科医「が情報源だったことを初めて認めた」とのこと。
ジャーナリズムの世界では、情報源は明らかにしてはならないそうであり(よくわからないが、危害が加えられないためのようだ。一方、書物の出典は明記しないと著作権法上の問題があるが)、「法廷でジャーナリストが情報源を明らかにするのはきわめて異例」(上記YOMIURI ONLINE)のようである。
しかし、本件の場合、草薙さんの行為は、非難できない。
その理由のひとつは、上記YOMIURI ONLINEに書いてあるが、それについては取り上げず、もう1つの理由について書いて見る。
証人の草薙さんには、証言の義務がある。業務上必要であっても、ジャーナリストには、証言を拒む権利がない(刑事訴訟法第149条。新聞記者について最高裁昭和27年8月6日大法廷判決)。もし証言を拒むと、刑事訴訟法第160条により10万円以下の過料、同第161条により10万円以下の罰金又は拘留(なお、第160条、第161条の併科は憲法第31条、第39条後段に違反しないことにつき、最高裁昭和39年6月5日判決)に処せられる可能性がある。ゆえに、ジャーナリズム魂があっても、証言を拒めない(又は、拒んで制裁を受ける)ということになる。
これから厳しく問われるのは、刑法第134条第1項の「正当な理由」があるのかどうかだろう。
*追記 2009年1月15日記
読売新聞2009年1月15日朝刊1面、34頁(仙台では)には、草薙厚子さんが取材源を明かしたことを批判する記事がでていた。特に、34頁では、最高裁が2006年に出した判断を引いて、証言拒絶を認めたものもあると紹介していた。以下、この最高裁の判断を基として、再度検討したい。
最高裁が2006年に出した判断は、最高裁の平成18年10月3日決定のことだろう。たしかに、証言を拒絶できるという判断はなされているが、それは、民事訴訟法第197条第1項第3号の「職業の秘密」に関するものである。刑事訴訟法第149条と比べると、刑事訴訟法のほうには、民事訴訟法第197条第1項第3号に当たるものがない(民事訴訟法第197条第1項第2号≒刑事訴訟法第149条)。条文の構造からすると、民事訴訟法の問題を刑事訴訟法に当てはめるのは無理で、草薙さん批判の根拠としては弱い。
これは、刑事訴訟法の不備が問題であろう。だから、草薙さんではなく、国会を批判すべきである。代わりに私から提言するが、国会は、速やかに、民事訴訟法第197条第1項第3号に当たる条文を刑事訴訟法内に新設すべきである。