清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

囚人に 寛容政策 いいかもな

1.いつだか忘れたが、「週刊金曜日」(金曜日)に、ノルウェーでは犯罪者に寛容な政策を採っているという趣旨の投書があり、NHK-BSでやるとのこと。なぜか刑事政策に興味のある私(一応某大学法学部卒)、さっそくNHK-BSの番組を観た(2009年11月7日12時10分から放送「未来への提言 犯罪学者ニルス・クリスティ~囚人に優しい国からの報告」)。

2.内容を思いつくままに書き留めてみると。

(1)まずはデータを。日本やノルウェーでは、人口の1,300人から1,600人に1人が囚人である。しかし、イギリスでは600人に1人。もっと悪いのはロシアとアメリカ。アメリカでは人口の100人に1人である230万人が囚人である。

アメリカの囚人増加にはいろいろな理由がある。薬物犯罪の増加。スリーストライク法(犯罪を3回すると死刑か無期懲役というイメージ)など。犯罪被害者もアメリカの犯罪学教授も厳罰を科すことを支持している。

それはいいが、厳罰化にもデメリットがある。アメリカの場合、(いつからの比較かは忘れたが)受刑者が70%増で、過剰収容状態である。体育館に3段ベッドを備えるほどの盛況である。そうなると、感染症が蔓延したり、受刑者による暴力がはびこったりする(ストレスなどが原因だろう)。また、財政難になり、教育プログラムがカットされるので、社会復帰に役立つものがなくなり、刑期を終えても生きるのが容易でない(そして、また犯罪をする)そうだ。

一方、ノルウェーでも、1970年代に、少年の厳罰化を推進したことがあるが、犯罪は減らず、再犯率が90%に。そこから方針転換し、社会的刑罰の考え方を採ったそうだ(社会とかかわりを持たせる方向)。

(2)ところで、ノルウェーには、島全体が刑務所である、バストイ島というのがある。「未来への提言」では、その島・刑務所の様子も描かれている。

たとえば、受刑者は教育が不十分で、経済・家族的に恵まれない人が多いので、読み書きから大学レベルの勉強が出来るという。

部屋を見ると、テレビやステレオがあり、ネットは不可能だが、パソコンまである。

刑務所では、助け合いと自立(炊事洗濯)を教わるという。刑務所の副所長いわく「ルールを守ることを教えるのが大事」だとか。

バストイ島までは1日4便船が出ているが、囚人が船を動かしている。

(3)後半に入って、犯罪学者ニルス・クリスティさんと、映像作家の森達也さんの対談シーンが多くなる。対談で出たクリスティさんの考えを書き留めると、下記のようになる。

ー?瑳圓里海箸鬚發辰斑里襪戮。
刑務所の中にいること自体が拷問で、矯正には向かない。
0畤住の環境が劣悪ではいけない。
じ携害修呂泙困ぁH蛤畆圓苦しむと矯正が難しくなるし、服役前に受刑者はもう十分苦しんだから。

(4)ノルウェーが犯罪者に寛容なのは、参審制(裁判官1人+参審員2人。裁判員の任期は4年で、年3、4件審理。なお、日本の裁判員制度のモデルだそうだ)の影響があるとか(そう言えるかは疑問だが、ここでは不問)。参審員の人は犯罪者がおかれている現状を理解するように努めるようになったという。この後、ニルス・クリスティさんの見解がいくつか出る。

\賁膕箸世韻任藁矛困偏る
犯罪者は多くの場合最下層で、普通の人間である。犯罪を犯さない人はそのことを知らない。
ノルウェーでは(犯罪者を理解しようという考えが浸透しているので。清高補足)刑罰を下すのに慎重になる。

(5)その後は、クリスティさんの半生、現在の活動(アルコール依存症の人やホームレスの人の支援にも熱心)を入れつつ、地方レベルの、対立調停委員会(軽微な事件において被害者と加害者の調停を義務付け、調停員は一般市民)の様子も伝える。

(6)この番組で伝えたかったことは、重複もあろうが、以下の通り。
“蛤畆圓縫皀鵐好拭爾呂い覆ぁ市民はもっと犯罪者を理解すべきである。そのためには、裁判外でもっと被害者や加害者と話し合うべきだ。
△垢戮討凌祐屬録祐屬覆里世ら、尊厳を持って扱われるべきで、衣食住などの最低限の物は、囚人であれあって当然である。
8携害修垢譴佗ず犯罪が減るというわけではなく、囚人に人間的な生活をさせることが出来るような処遇をするべきである。

3.なかなかいい作品だったし、啓発される内容だったが、刑罰を重くすることに抑止力があるという説もあるので(スティーヴン・レヴィット=スティーヴン・ダブナー『ヤバイ経済学』(東洋経済新報社)に、死刑には有意に抑止力はないが、刑罰を重くすると犯罪が減るという趣旨のことが書いてある)、そのあたりの判断は留保する。しかし、犯罪者のことをもっと知るべきで、人間的な処遇をすべきだというところには、共感を覚えた。