清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

違憲より 肝心なのは 差し戻し

昨日、NHKの「ニュースウォッチ9」を見たら、砂川市の神社について、政教分離に反する(憲法第89条、第20条参照)という最高裁判所違憲判決が出たそうで、そのニュースでは、おおむね違憲の判断につき妥当という趣旨で報じていた。

しかし、聞き漏らしたかもしれないが、実際の判決は、原告勝訴ではなく、破棄差し戻しである(各種新聞を御覧になればわかるが、ここでは毎日.jpの判決要旨を示す。http://mainichi.jp/select/jiken/news/20100121ddm012040022000c.html
。原告にとってはお気の毒な結果になった。

それはさておき、上記毎日.jpの判決要旨を見てみるか。なお、ところどころ読売新聞2010年1月21日朝刊13版1面、30面(仙台では)も参照する。

まず【多数意見】。「宗教的施設の性格、土地が無償で施設の敷地として供されるに至った経緯、無償提供の態様、これらに対する一般人の評価等、諸般の事情を考慮し社会通念に照らして総合的に判断すべきものと解される」というのは覚えておいたほうがよい(また、最高裁判所のホームページ(http://www.courts.go.jp
で確認したり、法律雑誌で確認したほうがいいだろう。

実際は、「鳥居や、ほこらに至る各物件は一体として神道の神社施設に当たるものと見るほかはなく、行われている祭事等の諸行事も、宗教的行事ということができる」、「諸行事を行っているのは連合町内会とは別の氏子集団」という事実が大きい。私見だが、覚えるのは法律解釈としても、大事なのは事実である。

「以上の事情を考慮し、社会通念に照らし総合的に判断すると、市と神社ないし神道とのかかわり合いが社会的、文化的諸条件に照らし信教の自由の保障の確保との関係で相当とされる限度を超え、憲法89条の禁止する公の財産の利用提供に当たり憲法20条1項後段の禁止する宗教団体に対する特権付与にも該当し違憲と解される」という結論も覚えるところ。私見ではこの解釈もありうるとしておく。

でも、この判決でもっとも大事なのは、「違憲状態を解消するためには、住民らが求めている神社施設の撤去及び土地明け渡し請求以外にも、市有地の全部または一部を無償で譲与し、有償で譲渡したり、または、適正な時価で貸し付けるなどの方法があり得る。(中略)また、直ちに神社施設を撤去させるべきだとすることは連合町内会の信頼を害するのみならず、住民らによる宗教的活動を著しく困難にし、氏子集団の構成員の信教の自由に重大な不利益を及ぼす。2審が違憲性を解消するため他の合理的で現実的な手段が存在するか否かについて審理判断しなかったことは違法。違憲性解消の他の手段の存否等について審理を尽くさせる必要があるから差し戻すのが相当である」のところ。さすが最高裁判所の裁判官ですな。あらゆる利益を考慮しており、感心したところである。もし裁判員になったら、検察官の主張に唯々諾々とせず、被告人側の主張も聞いてみよう。被害者側の主張も聞いてみよう。

以上、大した検討にもなっておらず、備忘録になってしまったが、ありえない判決ではない。

なお、同日、富平神社についての判断があった。読売新聞によると、「市(砂川市。清高注)が、私有地だった神社敷地を町内会に無償譲渡した行為の違憲性が争点になった。大法廷は無償譲渡自体は「違憲の恐れがある状態」を解消するための措置だったとして、合憲とした」という。

先ほどまで検討した判決要旨もそうだが、無償譲渡が合憲というのはおかしいのではないか?所有者の違いでこうも結論が違うのはおかしいのではないか?富平神社の判決文を見ていないのでなんとも言えないが、せいぜい「一部を無償で譲与し、有償で譲渡したり、または、適正な時価で貸し付けるなどの方法」しかないのではないか?

戻って、毎日.jpに載った判決要旨の違憲の部分を検討する。

田原睦夫裁判官の【補足意見】。「国家等所有の土地や施設に歴史的な経緯等」というのは意外と大事らしい(最大判昭和33年12月24日最高裁判所民事判例集12巻16号3352頁(砂川市の事件もこの判例がベースになっている)。有斐閣憲法判例百選供拌5版220事件の百地章先生の解説もご一読を)。しかし、憲法が優位するはずで、理解できない。むしろ、近藤崇晴裁判官の【補足意見】(「空知太神社が信者に精神的、経済的な支配力の強い宗教であるとは到底評価し得ない。しかし憲法の趣旨が、国が特定の宗教を優遇することを一切禁止するものである以上、砂川市の行為は、憲法に抵触するものであると評価せざるを得ない」)のほうが妥当ではないのか?

個人的に最低だと思ったのは、堀籠幸男裁判官の【反対意見】(同じ【反対意見】でも今井功裁判官とは方向が逆。今井さんが妥当だとは言わない)。「神道は日本に住む人々が集団生活を営む中で生まれた密着した信仰。(中略)創始者が存在し、確固たる教義や教典を持つ排他的な宗教と同列に論ずるのは相当ではない」だって。これでは、結果的に神道だけが優遇され、大日本帝国憲法下と変わらないじゃないか!