清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

刑政は 一般教養 かも知れぬ

よりよい社会を作るためには、実は刑事政策(≒犯罪学、刑事学)の知識が必要かもしれない、という話。

最近、日本犯罪社会学会編『グローバル化する厳罰化とポピュリズム』(現代人文社 2009年)という本を読んだ。それによると、「法曹養成課程のカリキュラムに犯罪学が含まれている国ほど、刑事政策に深みがあり厳罰化に走りにくい」(p120)とある。

本当かどうかはわからないが、データを収集して、そこからあるべき刑事政策を考えれば、単なる印象論よりはまともな刑事政策が出てくるのは(殺人が増加傾向でもないのに死刑判決が増加するのはまともとは言えないだろう。ただ、被害者の声を反映している側面もあり、悪いともいえないが)そんなに不思議ではない。

それでは日本はどうか?

今年までは、法科大学院制度とリンクした新司法試験と、法科大学院誕生前からある旧司法試験が併存しているので、どちらも調べてみよう。

まず新司法試験。法務省「新司法試験Q&A」(取得日2010年2月25日。なお、本エントリーのサイトの取得日はすべて同じ日。http://www.moj.go.jp/SHIKEN/shinqa01.html
によると、短答式は、「公法系科目(憲法及び行政法に関する分野の科目)/民事系科目(民法,商法及び民事訴訟法に関する分野の科目)/刑事系科目(刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目)」、論文式は、「公法系科目( 憲法及び行政法に関する分野の科目)/ 民事系科目( 民法,商法及び民事訴訟法に関する分野の科目)/刑事系科目( 刑法及び刑事訴訟法に関する分野の科目) /選択科目( 倒産法,租税法,経済法,知的財産法,労働法,環境法,国際関係法(公法系),国際関係法(私法系)のうち受験者のあらかじめ選択する1科目) 」とのことで、刑事政策はない。

一方旧司法試験。ウィキペディア「旧司法試験」(http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=%E6%97%A7%E5%8F%B8%E6%B3%95%E8%A9%A6%E9%A8%93&oldid=30706560
によると、短答式は「憲法民法、刑法」、論文式は「憲法民法、商法(中略)刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法」、口述式は「憲法、民事系(民法民事訴訟法)、刑事系(刑法・刑事訴訟法)」。2000年に法律選択科目が廃止されてから、刑事政策の復活はない。

法科大学院のカリキュラムは未確認。しかし、とりわけ大学受験を経験すればわかるように、試験勉強しない科目はそんなに勉強しないもの。ということは、2000年以降に法曹になる人は、刑事政策についてはそんなに勉強していない人が多い、ということである。

そういえば、『グローバル化する厳罰化とポピュリズム』では、(どこの国でもそうだが)日本でいわゆる厳罰化が進んでいるという。2000年以降に受験し合格した法曹に刑事政策の知識がないとすると、厳罰化に歯止めがかからない。『グローバル化する厳罰化とポピュリズム』を読んだ限りでは、何らかの深謀遠慮を推測してしまう。

それはさておき、法曹という専門家があまり当てにならないなら、読者の皆様が勉強するしかない。刑事政策関係の本は少々高いので(買うのが最善だが)、まずは図書館で「刑事政策」、「犯罪学」、「刑事学」あたりで検索して一冊手にとって見たらいかがか。略歴で「教授(犯罪学or刑事政策or刑事学)」とあれば、とりあえず読んでいいだろう。それと『犯罪白書』(勧めておいて、ほとんど読んだことがないが)。これらの本で、専門家がどういう議論をしているのかを、まずは素直に学ばれてはいかがか。刑事政策上のトピックについて意見を述べるのは、それからでも遅くはない。