労働者派遣法が改正されるという。しかし、事は、そう容易ではないようだ。本エントリーでは、産経新聞3月19日社説(「【主張】派遣法改正 角を矯めて牛殺すのでは (1/2ページ)」(2010年3月20日アクセス)http://sankei.jp.msn.com/economy/business/100319/biz1003190333006-n1.htm)
に沿って検討する(以下において、カギカッコ内は、MSN産経ニュースに載っていた、産経新聞2010年3月19日社説)。
「社会問題化した『派遣切り』の動きに対応して、日雇い派遣を原則禁じるなど派遣労働を大幅に規制する」のは大変結構なことだ。ただ、「派遣労働者の保護が目的だというが、景気回復が不透明な中で派遣という働き方を規制すれば、かえって雇用不安を広げる恐れがある」というのもわかる。簡単に人を切れるのが派遣のメリットでもあるし。結局は、派遣労働者があまりにも酷なのがそもそもの問題のはずである。
「派遣労働者への『事前面接』も労使でやっと合意したが、社民党などの介入で解禁が見送られた」→さすがウヨクの産経新聞、「社民党」とだけ書いている(字数の都合もあろうが)。それはさておき、この「介入」、逆に切る側にとっては順風である。すなわち、事前面接がないと、もっと「簡単な採用手続き」(最高裁昭和61年12月4日判決 日立メディコ事件)になる(だろう)からである。
「すでに一部の輸出メーカーでは規制強化をにらんで派遣労働者の採用増を見送り、残業などで対応する動きが出ている。これでは『角を矯めて牛を殺す』ことにならないか」→これ、論点ずらしてるよ。つまり、「残業」が問題なんじゃ?
「働き手を集めにくい中小企業への打撃も深刻だ。人材の募集や面接などにも負担がかかるため、派遣労働に依存してきた中小企業は多い」→こういうデメリットはあろう。正当な指摘。
「改正過程にも問題が多い。労働関係の法改正などでは、厚生労働相の諮問機関である労働政策審議会の下で労使による合意が尊重されてきた。今回も派遣先企業が派遣社員を選べる『事前面接』の解禁をめぐり、労使で合意したにもかかわらず、閣議決定前に社民党と国民新党が『容姿などで判断される恐れがある』などと反対して合意を覆した。今後に禍根を残したと言わざるを得ない」→今までになかった(たぶん)から「今後に禍根」は極端だろう。所詮法律を作るのは立法府なんだから。ただ、「過程」よりも、内容面では問題がありそうであることについては、既述。
「厳しい労働環境に置かれている派遣労働者の待遇改善は労使で進めなければならない」→これだけ?それなら、派遣切りに遭うと、なぜいきなり路上生活をする人が出てくるの?あくまでも居座ることも大事だが(借地借家法第26条、第30条適用の結果。でも、その立場に置かれたら、大多数は出て行くって)、失業保険の問題など、現在でも不都合は多々あろう。「労使」を無視していいわけではないが、政治家が問題点を見つけられたら、速やかに改正して悪いわけではあるまい。