清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

住民が 間違うことも あるんだよ

毎日.jp「福島自立更生促進センター:反対4万人、来月にも見切り稼働 住民、治安悪化を懸念」(毎日新聞 2010年5月31日 東京夕刊。2010年6月16日アクセス。http://mainichi.jp/select/wadai/news/20100531dde041040004000c.html
によると、「刑務所を仮釈放された人の社会復帰を助ける「福島自立更生促進センター」(福島市狐塚)が、6月にも入所者の受け入れを開始する。施設完成から2年。法務省は治安悪化を懸念する住民の説得を続けてきたが溝は埋まらず、4~5月だけで3万9617人分の反対署名が集まった」という(以下、「反対4万人」。なお、断りのない限り、以下のカギカッコ内は上記記事からの引用)。

「県立福島高校保護者会の鈴木清治代表(52)は『法務省のやり方は強引で納得できない。一定数の理解者の根拠もない』と反発」しており、地域住民の評判が悪いのは、約4万人の署名からもわかる。また、法務省側も、進め方がまずかったところがある(毎日.jp「自立更生促進センター:反対住民ら要望の公開討論会、福島保護観察所が拒否 /福島」(毎日新聞 2010年5月25日 地方版。2010年6月16日アクセス。http://mainichi.jp/area/fukushima/news/20100525ddlk07040248000c.html)
)のは否定できない。

しかし、それでも、今回の件は、法務省の進め方が妥当で、住民が間違っていると思う。以下、「反対4万人」に沿って検討する。

まず場所。「ハローワークに近く保護観察所の敷地内」であれば、最適だろう。

犯罪白書(09年版)によると、再犯や順守事項を破るなどして、仮出所後5年以内に約3割が刑務所に戻っている」とあるが、反対の決定的な理由にはならない。詳しい数字は忘れたが、NHKの「クローズアップ現代」(いつかは忘れた)で見たところ、仮出所した人のほうがい再犯率が低いから(記憶では出所後約5割)である(より安全な人が自立更生促進センターに入るとイメージしてよい。しかし、仮出所しない人も受け容れたほうが、皆さんのためである)。

「センターの半径500メートル内には中学・高校などが6校」も決め手にならない。施設を作ろうが作るまいが、犯罪にほとんど遭わないだろうからである。それに、施設にいる人か否かは簡単にはわからないだろう。仮にわかっても、人生勉強すればよい(貧困状態に陥れば、犯罪をせざるを得なくなる。もちろん、犯罪の奨励ではない)。

法務「省は▽子供への犯罪歴がある▽覚せい剤への依存性が高い▽性的犯罪性向がある--仮出所者を除外し、開所後1年間は入所を定員20人の半数未満に抑えるなど譲歩した」ことから、法務省の態度にはそれなりのものが感じられる。「住民団体から公開討論会への参加を求められた井坂巧・同省福島保護観察所長が『これ以上やっても平行線。議論の余地はない』と回答した」ことを、住民は反省すべきだろう。保護観察所長という、更生の現場を(おそらく住民よりは)知っている専門家の話を、住民は聞く気があるのだろうか(記事からは不明)?

「県保護司会連合会の鈴木光二会長(68)は『反対する気持ちも分かるが、満期で釈放されても家庭や仕事がないのでは一層再犯が心配。地域の理解と協力が必要だ』」というのは、決して嘘ではないようだ。本エントリーについてよりよく知りたい方は、浜井浩一『2円で刑務所、5億で執行猶予』(光文社新書。2009)を一読していただきたいが(とりわけ、p129~p131)、私の知る限り、更生の現場を知っている専門家で自立更生促進センターに反対する人はいないので、自立更生促進センターについての心配は、われわれが思っているほどではないと判断していいだろう。

住民の方には酷なことを書いたが、私も(元も含め)犯罪者が近くにいることを想像したら、反対運動に乗るかもしれない。しかし、(元も含め)犯罪者の立場に立ったら、周りの人間が受け容れなければ、それなりにショックを受けるだろうから、自立更生促進センターに反対するのは、一面的で不合理であると考えている(ましてや、本エントリーに書いたように、法務省側が譲歩すれば)。読者、ならびに住民の皆様も、生活者だけの視点ではなく、犯罪者がどのようにしたら立ち直れるかを真剣に考えたほうがいいと思う。そうすれば、本エントリーも一理あると感じられるだろう。

*2010年6月17日一部修正