asahi.com「プリンスホテルを起訴猶予 教研集会の参加者宿泊拒否」(2010年7月2日8時39分。2010年7月4日アクセス。http://www.asahi.com/national/update/0702/TKY201007020007.html)
によると、「日本教職員組合(日教組)の2008年の教育研究全国集会(教研集会)で、会場使用を拒んだ際に宿泊予約を取り消したとして、旅館業法(宿泊させる義務)違反の疑いで書類送検されていた法人としてのプリンスホテル(東京都豊島区)と同社の当時の幹部ら4人について、東京地検は1日、不起訴処分(起訴猶予)にした」という。
一般論として、不起訴にすることは、刑罰権の行使がなくなったわけだから、いいことである。しかし、今回の不起訴処分に関しては、不当な処分であると考える。
上記asahi.comを読み進めると、「捜査関係者によると、形式的には同法に違反するものの、『右翼の街宣車の騒音で周囲の学校などに迷惑をかける』とするホテル側の主張も一定の理解ができると判断した」という。しかし、「ニッポンの がんは右翼と 新高輪(5)」(http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/47395181.html)
に書いたように、「斎藤貴男さんの『メディア@偽装』(マガジンハウス)に詳しく書かれているが、右翼団体などの活動の心配がほとんどないのだそうだ(グランドプリンスホテル新高輪周辺は、大音量を流せない地域なのだという)」 という事情があるし、「『右翼の街宣車の騒音で周囲の学校などに迷惑をかける』」のならば、警察が取り締まればいい(立派な営業妨害でもある)ので、理由になっていない。
また、「宿泊予定者が別のホテルなどに宿泊できたこと」をどこまで考慮すればいいのかも疑問。もし宿泊できなければ、その場合だけ犯罪なのだろうか(今回の問題は、「宿泊者が違法行為又は風紀を乱す行為をするおそれがあると認められる」(旅館業法第5条第2号)か否かの問題だったはず)?今回の場合は、プリンスホテルでなくても構わない事例だったが、もしホテルに何らかの価値があった場合でも「べつのホテルなどに宿泊できなこと」で起訴をしなくていいのだろうか?
なんだかんだ言って、今回の不起訴処分は、日本教職員組合という、左の組織が被害者だったので不起訴になったのでは、と疑ってしまう。日本の国家権力って、伝統的に左に対してアレルギーを持っているみたいだから(何かの本で読んだが、岩波書店の『世界』を読んだだけで「アカ」とされた警察官がいたそうだ(『世界』が左寄りなのは理解するが))。また、カレル・ヴァン・ウォルフレン『日本/権力構造の謎』(ハヤカワ文庫。1994年)p397~「〈システム〉の敵」もご一読ください。