尖閣諸島沖で、中国人船長を逮捕したが、処分保留のまま釈放した事件において、読売新聞、よみうりテレビ、東京放送、これらのメディアを見た限りでは、政治判断が働いて釈放したとか。一方、フジタの従業員4人が拘束されたり、旅行客がキャンセルしたりといったことは、中国の報復だという。
このことが間違いとは言わない。しかし、おかしくないか?
そもそも被疑事実の公務執行妨害罪(刑法第95条)って、どれくらい起訴されるの?『ポケット六法』(有斐閣)平成22年版にp1894に載っている、「罪名別検察庁終局処理人員・起訴率(平成19年)」によると、公務執行妨害罪のカテゴリーがなく、「その他」扱いであり、「その他」の起訴率は34.2%である。外国人が関係すると思われる、「特別法犯」の「入管法」の起訴率だって45.3%である。つまり、この事件、そもそも起訴される可能性が低く、どうせ近いうちに釈放されるんじゃなかったの?
一方、特にフジタの従業員の拘束。中国側が報復を認めたくなければ(船長釈放の現在では、4人の釈放は報復を認めることと同じ)、場合によって4人は死刑だろう。つまり、報復と騒ぐほど、フジタの従業員が死ぬ可能性が高くなる。このことまで頭に入っているだろうか?誘拐事件にだって報道協定はあるのだから、今回の事件においては、報復と騒ぐことだけは避けたい。
このように、私見では、マスメディアが流している情報は、真実である証明が不十分であり、別の論点では、人の生命を危険にさらす、非常にまずいものになっている。