清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

「亡国」は 『週刊新潮』 だったんだ

読売新聞2011年2月24日朝刊13版7面(仙台では)に、『週刊新潮』2011年3月3日号の見出しが載っている。

そこには、「『生活保護』を無限増殖させる亡国ハウツー本で儲ける人々」とあり、湯浅誠さんの写真が載っている。

「亡国ハウツー本で儲ける人々」が具体的に誰なのかわからないが(いろいろな人がハウツー本を書いているが、すべてを読んでいるわけではない)、湯浅誠さんとして、以下論を進める。

湯浅誠 生活保護」でアマゾン検索した結果は、こちら。
http://www.amazon.co.jp/s/ref=nb_sb_noss?__mk_ja_JP=%83J%83%5E%83J%83i&url=search-alias%3Dstripbooks&field-keywords=%93%92%90%F3%90%BD%81@%90%B6%8A%88%95%DB%8C%EC&x=13&y=27

おそらく、『あなたにもできる!本当に困った人のための生活保護申請マニュアル』(同文舘出版、2005。以下『生活保護申請マニュアル』と表記)のことと思われる。

実はこの本、私は読了している。また、レビューもしているが、決して、「『生活保護』を無限増殖させる亡国ハウツー本」ではない。

「本当に『困っている』」(『生活保護申請マニュアル』p6)とわざわざ強調しているし(「家族がいて(中略)全然楽にならない」(p6)という人は対象外)、「万策尽きたら、生活保護という『制度』を利用する」(『生活保護申請マニュアル』p21)というように、安易に生活保護受給を勧めているわけではないからである。もしこの本を取り上げたとしたら、読まないで取り上げたのだろう。

週刊新潮』の関係者、ならびに読者は知らないだろうな、生活保護の現実を(といっても、自分で調べたわけではないが)。

いわゆる「年越し派遣村」の前は、生活保護受給者は、主に、高齢者と病気の人だった。『週刊新潮』の論理を突き詰めると、「高齢者と病人は死ね!!!」となる。

年越し派遣村」をきっかけに、本来は受給できるはずの人が、正当に受給できるようになったのである(通達があったらしい)。それでも、「生活保護を受ける人ができる人のうち、実際に生活保護受けている人の割合」(本田良一『ルポ 生活保護』(中公新書、2010))である捕捉率は、『ルポ 生活保護』によると13.5%で、先進国に比べると格段に低いらしい(厚生労働省の推計ではもう少し高いそうだ)。また、『ルポ 生活保護』「はじめに」3ページによると、1950年代に比べて現在の保護率・被保護人員、ともに高いとは言えないし、バブル崩壊直後(1995年)が保護率・被保護人員が最低であることからすると、現在の受給者増は、経済状況が原因で、仕方のないものである。

権利は書かれていても、主張しないと保護されないものだし、生活保護受給の資格のあるものが受給することで、国は真剣に対策を立てるインセンティブが生じるだろう(最低賃金アップ、職業訓練充実、雇用創出など)。これらを否定しようとし、高齢者と病人に死刑宣告する『週刊新潮』が「亡国」(ただでさえ人口減なのに、減らそうと主張するなんて)である。

週刊新潮』関係者の方々のご冥福をお祈りいたします。

(追記 2011年2月25日記)

立ち読みですが、『週刊新潮』、拝読した。やはり『生活保護申請マニュアル』にスペースが割かれていた。引用も豊富だったが、当ブログレベルの引用をしておらず、恣意的なものを感じた。「闘い」(『週刊新潮』)のどこが悪いのだろう。『権利のための闘争』すら知らないバカが書いたのか。

また、なぜか、政治評論家の三宅久之さんがコメントを寄せており、「メンタリティ」(『週刊新潮』)云々と言っていた。三宅さんの論理では、1950代の日本人は、腐っていた一方で、バブル経済の時の日本人のメンタリティは高かったことになる。そう思うのは結構だが、メンタリティを測るのは容易ではなく、(といっても、当ブログのエントリーもラフだが)経済状況が原因であるという説明のほうが理解しやすいはずである。

三宅さんのご冥福もお祈りいたします。

*本エントリーのほかに、生活保護を知るうえで有益だった本
生活保護の経済分析』(阿部彩など、東京大学出版会、2008)
社会保障の「不都合な真実」』(鈴木亘 日本経済新聞出版社、2010)

**文中一部敬称略