「おそらくは 過失がないと いうことか 」(http://blogs.yahoo.co.jp/kiyotaka_since1974/51815050.html)
の続き。
上記asahi.com「山口県光市の母子殺害事件をめぐり、被告の元少年(30)の弁護人らが「大阪府知事就任前の橋下徹弁護士のテレビでの発言で名誉を傷つけられた」などとして損害賠償を求めた訴訟の上告審判決が15日、最高裁であった。第二小法廷(竹内行夫裁判長)は、橋下氏の賠償責任を認めた一、二審判決を破棄し、改めて弁護人らの請求をすべて棄却した。橋下氏の逆転勝訴が確定した」という。
「原審の適法に確定した事実関係の概要」のうち、橋下徹弁護士の発言は以下の通り。
「①「死体をよみがえらすためにその姦淫したとかね,それから赤ちゃん,子どもに対しては,あやすために首にちょうちょ結びをやったということを,堂々と21人のその資格を持った大人が主張すること,これはねぇ,弁護士として許していいのか」,②「明らかに今回は,あの21人というか,あの安田っていう弁護士が中心になって,そういう主張を組み立てたとしか考えられない」などと発言した上,③「ぜひね,全国の人ね,あの弁護団に対してもし許せないって思うんだったら,一斉に弁護士会に対して懲戒請求かけてもらいたいんですよ」,④「懲戒請求ってのは誰でも彼でも簡単に弁護士会に行って懲戒請求を立てれますんで,何万何十万っていう形であの21人の弁護士の懲戒請求を立ててもらいたいんですよ」,⑤「懲戒請求を1万2万とか10万とか,この番組見てる人が,一斉に弁護士会に行って懲戒請求かけてくださったらですね,弁護士会のほうとしても処分出さないわけにはいかないですよ」」(など。デイリーモーション「橋下弁護士」(http://www.dailymotion.com/video/x6y4cs_yyyyy_news)
でご確認を。なお、「なお,第1審被告は,本件被告人本人の言い分や本件弁護団との接見内容等,本件弁護団の弁護活動(以下「本件弁護活動」という。)の当否に関係する重要な情報を直接知り得る立場にはなく,当時,報道等により知り得たもの以上の情報を有していなかった」(判決文))。
それを踏まえて、「本件被告人(元少年。清高補足)は,無期懲役の判決を受けた第1審及び第1次控訴審においては,本件公訴事実を認めていたのに,第1次上告審において初めて故意を否認し始めたところ,第1審原告らを含む本件弁護団は,第1次上告審が,本件否認の主張を排斥した上で,第1次控訴審の判決を破棄し,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき審理を尽くさせるために本件刑事事件を原裁判所に差し戻したにもかかわらず,第2次控訴審においても改めて本件否認の主張を展開したというのである。そして,第1審被告が,以上のような本件刑事事件の経過や本件否認の主張の内容を踏まえ,本件否認の主張をすることは弁護士としての職責に反する(第1次上告審と第2次控訴審の主張の詳細が違っていたとしたら、刑事訴訟法第393条、第392条第2項に矛盾する話じゃないか? 清高補足)旨を詳細に主張していることは記録上明らかである。本件発言が,上記の主張に沿ったものであることからすると,第1審被告としては,第1審原告らの本件弁護活動が本件被告人に不利益な弁護活動として,懲戒事由に該当すると考えていたとみるのが相当であって,第1審原告らに対する懲戒請求に理由がないことを知りながら本件呼び掛け行為をしたとの原審の上記事実認定は,経験則に反するものといわざるを得ない」とあるが、動画で見た限りでは、「第1次上告審が,本件否認の主張を排斥した上で,第1次控訴審の判決を破棄し,死刑の選択を回避するに足りる特に酌量すべき事情があるかどうかにつき審理を尽くさせるために本件刑事事件を原裁判所に差し戻したにもかかわらず,第2次控訴審においても改めて本件否認の主張を展開した」とは聞けなかったが(「いきなり出てきた」、「差戻審になってはじめて」(以上、デイリーモーションより)とは言っているが)。
「刑事事件における弁護人の弁護活動は,被告人の言い分を無視して行うことができないことをその本質とするものであって,被告人の言い分や弁護人との接見内容等を知ることができない場合には,憶測等により当該弁護活動を論難することには十分に慎重でなければならない」はずなのに、「第1審被告が,弁護士であることを考慮すると,刑事弁護活動の根幹に関わる問題について,その本質についての十分な説明をしないまま(中略)多数の視聴者が懲戒請求をすれば懲戒の目的が達せられる旨の発言をするなどして視聴者による懲戒請求を勧奨する本件呼び掛け行為に及んだことは,上記の問題の重要性についての慎重な配慮を欠いた軽率な行為であり,その発言の措辞にも不適切な点があったといえよう」だけですか?
「懲戒請求に対する反論準備等の負担を強いられるなどして精神的苦痛を受けたことは否定することができない」としても、弁護士法第58条第1項を出してはいるが、「視聴者自身の判断に基づく行動を促すものである。その態様も,視聴者の主体的な判断を妨げて懲戒請求をさせ,強引に懲戒処分を勝ち取るという運動を唱導するようなものとはいえない」とする。しかし、やしきたかじんさんなどならさておき、弁護士の発言なら相応の違いがあるのに、「憶測等により当該弁護活動を論難」などを根拠に懲戒請求を語っていいものだろうか? 「インターネット上のウェブサイトに掲載された本件書式」だって、橋下弁護士発言がなかったら、どれくらい利用されたか(第2審だったと思うが、光市事件の21人の弁護士で懲戒請求されたある弁護士は、橋下弁護士の発言以前は、懲戒請求されたことがなかったらしい。報道は既になされていたことを考慮すると、最高裁判決は、「経験則に反する」話にしか見えない)。
ただ、「本件懲戒請求は,本件書式にあらかじめ記載されたほぼ同一の事実を懲戒事由とするもので,広島弁護士会綱紀委員会による事案の調査も一括して行われたというのであって,第1審原告らも,これに一括して反論をすることが可能であったことや,本件懲戒請求については,同弁護士会懲戒委員会における事案の審査は行われなかったこと」を重視したのだろうな、最高裁判所は。