ある週の『週刊金曜日』(金曜日)に、「本当のことを言うのは『東京新聞』『週刊ポスト』『日刊ゲンダイ』」という趣旨の文章が載っていたが(オリジナルは『週刊朝日』であることは記憶しているが、どの号かは失念。読者の皆様の調査を乞います)。その『週刊ポスト』の新連載は、『東京新聞』(中日新聞)論説副主幹の、長谷川幸洋さんの「ニュースの言葉は嘘をつく」である(2011年8月12日号p59)。本当のことが聞けそうな、期待の連載のようだ(と書いたが、清高が以後読むことは保証しません)。
第1回は「『ばらまきは悪』にあらず」とある(以下のカギカッコ内は、「『ばらまきは悪』にあらず」から引用)。
それによると、「全員に配ったほうが公平」で、「『特定層に絞れ』という話に簡単に乗れないのは、その裏側にたいてい官僚の天下り利権が隠れているからだ」という。また、そして、「官僚は『特定層に絞らないばらまき』では、自分たちの利益につながらないので、無駄遣いの典型であると批判する。新聞はじめマスコミは官僚の本音に気付かず、言い分をそのまま報じてしまう。その結果『ばらまきは悪である』との誤解が広がってしまった。報道が促す思考停止の典型だ」とまとめる。
長谷川さんは、官僚の天下りの話にしたいらしいが、原則論としては、「『ばらまきは悪』」とは言えないことを指摘できており、正当である。
ただ、「『ばらまきは悪』に非ず」には、2点疑問がある。
第1に、「『特定産業へのえこひいき』」は、「成長産業の育成」という側面を、おそらく全否定はできない。それで国が潤うならば、いい場合がある。
第2に、「徹底的なばらまきは、たとえば所得減税だろう」のところ。率でやると、税率の高い高所得者が得をする側面がある(減税分の手取りが多くなるので)。麻生政権下の定額給付金や、なくなった(らしい)が、民主党政権の子ども手当は、累進税率を考慮しても(再分配の効果があるので)、一律給付という、「公平な政策」のはずだが。もっとも、哲学として、定額給付金は労働のインセンティブを削ぎかねない欠点があるのに対し、子ども手当にはないというのが違いか(実質的な議論はしていない)。