『読売vs朝日』という比較本が、中公新書ラクレから出ているが、当ブログでもやってみますか。
比較対象
①asahi.com「沖縄の教科書―町に矛盾押しつけるな」(2011年10月31日社説。http://www.asahi.com/paper/editorial20111031.html)
②「沖縄の教科書 混乱招いた竹富町の独自採択(11月6日付・読売社説)」(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20111105-OYT1T00935.htm)
①の注目点を引用すると、
(ア)「国が放置してきた制度の矛盾のつけを、小さな町に押しつける。そんなやり方ではないか」
(イ)「小中学校で学ぶ子どもの教科書は国の費用でまかなうという制度に、穴があく。「義務教育無償」を定めた憲法26条の精神を、より広く実現するための大切な柱」
(ウ)「混乱のもとは、いくつかの市町村が共同で同じ教科書を選ぶ広域採択制度にある。1963年にできた教科書無償措置法で定められたしくみだ」
(オ)「本来は、地域や子どもの事情に合わせ、教科書も色とりどりであっていい。多様な学びを、国が財政的に支える。それがあるべき姿」
②の注目点を引用すると、
(キ)「教科書を国費で配布することを定めた教科書無償措置法は、複数の市町村からなる広域地区では同じ教科書の採択を義務づけている。/教師が地域で教材の共同研究をしやすいことや、子供が近隣の市町村に転校しても同じ教科書を使える利点があるためだ」
①、②とも改革を主張している割には(①では、「文科省は、教科書採択制度の改革に本気でとりくむべきだ」、②では「今回のような事態が再発しないよう、文科省が必要な措置を講じることだ。教科書採択に関する法律や制度を点検し、改善すべき点がないかどうか、議論を始めてもらいたい」)、方向が正反対で面白い。
少し検討すると、①について、(ウ)で「混乱のもとは」とあるので、地方教育行政法のほうが先にできたと推測する。(ア)や(エ)はわかるが、後法は前法を廃するという側面が法律にはあるので、広域採択制度が優先されるのではないか? 解釈論としては、おそらくasahi.com(朝日新聞)の見解は無理なのだろう。
次は②。解釈論では優勢でも、政策論はダメである。(キ)について、「子供が近隣の市町村に転校しても同じ教科書を使える利点」とあるが、八重山地区に当てはめるのは無理だろう(わざわざ中学校に通うためだけに、たとえば石垣島から他の島へ行くのだろうか? ①によると、「石垣市、与那国町、竹富町」だから、石垣島、与那国島、西表島や波照間島が主な地区である)。また、「近隣の市町村」だけ尊重してもダメだ。突き詰めれば、国で教科書をつくるとしかならず(私の経験では、宮城県仙台市と札幌市では教科書もカリキュラムも違った)、共産主義的である。
以上、ならびにその他(双方の社説を全文読んでください)の検討の結果、細かな解釈論だけは読売新聞の勝ちだが(読売支持の根拠は「現行法だから従え!」ぐらいしかない)、政策、憲法論、今後の方向性は、朝日新聞の勝ちと私は判断する。