清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

裁判官 宮川光治が いい意見

2012年1月17日3時1分に配信されたasahi.com「「教員の減給・停職は慎重に」君が代不起立で最高裁判決」(上からアクセス)によると、「卒業式などの式典で日の丸に向かって起立せず、君が代を斉唱しなかった公立学校の教職員らに対する東京都の懲戒処分は行き過ぎか。処分のあり方が争われた3件の訴訟の上告審判決で、最高裁第一小法廷(金築誠志裁判長)は16日、「戒告は裁量権の範囲内だが、減給・停職は慎重に考慮する必要がある」とする判断基準を初めて示した。そのうえで減給と停職の処分を一部取り消した」という。
 
論より証拠、まずは、この事件の、最高裁平成24年1月16日判決(http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20120116162214.pdf) をご覧ください(カギカッコ内は、最高裁平成24年1月16日判決から引用。なお、判決文は著作権の保護はない)。
 
「原審(第2審。清高補足)は,本件職務命令は憲法19条等の憲法の規定に違反するものではなく違法であるとはいえないとした上で,第1審原告らが都教委からそれぞれ受けた戒告処分及び減給処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用するものとして違法であるとし」たのを、「本件職務命令の違反を理由として,第1審原告らのうち過去に同種の行為による懲戒処分等の処分歴のない者に対し戒告処分をした都教委の判断は,社会観念上著しく妥当を欠くものとはいえず,上記戒告処分は懲戒権者としての裁量権の範囲を超え又はこれを濫用したものとして違法であるとはいえない」としている。
 
その一方で、「不起立行為等に対する懲戒において戒告を超えてより重い減給以上の処分を選択することについては,本件事案の性質等を踏まえた慎重な考慮が必要となるものといえる」とし、「過去の非違行為による懲戒処分等の処分歴や不起立行為等の前後における態度等(以下,併せて「過去の処分歴等」という。)に鑑み,学校の規律や秩序の保持等の必要性と処分による不利益の内容との権衡の観点から当該処分を選択することの相当性を基礎付ける具体的な事情が認められる場合であることを要すると解すべき」とした。そして、「相当性を基礎付ける具体的な事情が認められるためには,例えば過去の1回の卒業式等における不起立行為等による懲戒処分の処分歴がある場合に,これのみをもって直ちにその相当性を基礎付けるには足りず,上記の場合に比べて過去の処分歴に係る非違行為がその内容や頻度等において規律や秩序を害する程度の相応に大きいものであるなど,過去の処分歴等が減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものであることを要するというべきである」とした。
 
そうなると、相当数の不起立行為があれば減給の可能性はあるが(「頻度」)、それが「減給処分による不利益の内容との権衡を勘案してもなお規律や秩序の保持等の必要性の高さを十分に基礎付けるものである」か否かが問われるのだろう。
 
裁判官櫻井龍子の補足意見も見ても、事実を直視し、双方の利益を衡量している、比較的まともな判決と判断してよかろう。
 
それに加えて、裁判官宮川光治の反対意見が味のある意見で、今後に影響はないとしても是非一読していただきたい。以下、印象に残った文章を抜粋する。
 
「教員における精神の自由は,取り分けて尊重されなければならない」
 
「式典において,教育の一環として,国旗掲揚,国歌斉唱が準備され,遂行される場合に,これを妨害する行為を行うことは許されない」(とちゃんと利益衡量をしている)
 
「生徒に対し直接に教育するという場を離れた場面におては,自らの思想及び良心の核心に反する行為を求められることはないというべきである。音楽専科の教員についても,同様」(事実を直視した素晴らしいご見解)
 
「原審も指摘しているが,憲法学などの学説及び日本弁護士連合会等の法律家団体においては,式典において「君が代」を起立して斉唱すること及びピアノ伴奏をすることを職務命令により強制することは憲法19条等に違反するという見解が大多数を占めていると思われる」(要調査だが、まともな見解。実質的に踏絵だもの。芦部信喜憲法』(新版補訂版、岩波書店、1999)p140参照(最新版での確認を乞う))
 
「戒告処分は法の定める懲戒処分の中では最も軽いが,処分を受けると,履歴に残り,多数意見も認めるとおり勤勉手当は当該支給期間(半年間)において10%の割合で減額され,昇給が少なくとも3か月延伸される可能性があり,その延伸によりひいては,退職金や年金支給額への影響もあり得る」
 
「教職員の主な非行に対する標準的な処分量定(東京都教育長決定)に列挙されている非行の大半は,刑事罰の対象となる行為や性的非行であり,量定上それらに関しても戒告処分にとどまる例が少なくないと思われる」
 
「式典は毎年度2回以上あり,不起立行為等を理由とする戒告処分は短期間に累積されていくのであるから,ある段階では減給処分がなされる可能性がある。多数意見は,起立斉唱行為に係る職務命令は思想及び良心の自由についての間接的な制約となる面があることを認めていることに鑑みると,ただ単に不起立行為等が累積したにすぎない場合に減給処分が裁量の範囲にあるものとされる可能性を容認することは,相当でないと思われる」
 
*文中敬称略