清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

企業がね 消費者訴え 制約す

2012年3月6日、7日0時から、NHKBS1で放送された、「BS世界のドキュメンタリー ホットコーヒー事件の真相 アメリカの司法制度」が興味深かった。

BS1では前編、後編の構成だが、番組は大まかに分けると4部構成である。

第1部は、いわゆるホットコーヒー事件。ステラ・リーベック(故人) vs マクドナルドの訴訟である。懲罰的損害賠償が認められたが、アメリカでは、裁判で高額を吹っ掛けるバカ、みたいな報道の扱いだったという。しかし、実際は、やけどで皮膚移植が必要であり、1万ドルを費やしたが、マクドナルドは800ドルしか払わなかった。コーヒーの温度は摂氏82~84度で、2、3秒触れると重大なやけどを起こすという。そんな重大なやけどの事故を、マクドナルドはすでに700件も把握していたのに、何ら対策を取らなかったとか。しかし、企業(マスメディア含む)にとっては賠償額が高いのはいいことではないので、賠償を少なくするために、不法行為法改正の団体を作り、ロビー活動をしていたそうだ。

第2部は、医療ミスで酸欠状態になり、脳に障害が残ったコリー・グーリンの親は訴えを提起した。陪審員は賠償額を560万ドルと認定したが、すでに賠償額に上限を設ける法律があったため、125万ドルに減額された。これでは一生の介護には足りず、自立もできない。賠償額に上限を設ける理由は、サービスの価格を上げないためらしいが、実際は、賠償額に上限を設けても、医療費は上がっていたそうだ。そして、保険会社が儲けている。

第3部。オリヴァー・ダイアス裁判官は、ミシシッピー州最高裁の裁判官に立候補するが、企業寄りの判決を以前からしなかったので、企業(団体、企業寄りの政治家)から攻撃を受ける。ネガティブキャンペーンを受けたが当選。しかし、2回起訴される。いずれも無罪だったが、3年間職務を遂行できなかった。その前後、原告敗訴(企業側の勝訴)の判決が多く出たらしい。ダイアスは、2008年の選挙にも出たが、逮捕歴がネックになったか、落選。

第4部。ジェイミー・リー・ジョーンズは、ハリバートンという企業の従業員だった。イラクに派遣されるが、大多数が男性の環境におかれる。そして、着任4日目にレイプされる。しかし、強制的仲裁条項のある契約書に署名したため、企業寄りの仲裁人の仲裁しか受けられない。それだけではなく、警備員に提出した証拠まで隠されたという。公の裁判に訴えるために戦っている。

あらすじはここまで。以下、感想を書く。

まず、アメリカ社会の、三権分立に対する信頼感が垣間見える。企業と個人が対等に戦うのは裁判の場だけという思いが伝わってくる。

日本では、訴えを提起する場合、訴訟の目的の価額に対応した手数料を払わなければいけない(民事訴訟費用等に関する法律(法令データHP内。http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S46/S46HO040.html 参照)。だから、そんなに気楽に訴えられるわけではないが、アメリカではどうなのだろう? だからと言って、賠償額に上限を設けると、被告側のモラル・ハザード(金融機関ではないが。Yahoo! 辞書「モラル・ハザード」(http://dic.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%83%A2%E3%83%A9%E3%83%AB%E3%83%8F%E3%82%B6%E3%83%BC%E3%83%89&fr=dic&stype=prefix 参照)が生じてよくない(要約)のは、番組の通りである。

それにしても、企業(一部だろうが)のあこぎさがよく出た作品だ。もちろん、金を持っている方が強い。しかし、金を持っているからと言って、何をやってもいいわけではない。不公平があれば直すべきである。

マスメディアの報道も事実と異なるものが多かったらしい。第1部とした事件は、リーベックが運転したわけではないという、基本的な事実誤認をした人が多かった。マスメディアが事実を捻じ曲げることがある、ということがわかり、有益な内容である。

あと、番組を見て、安田好弘弁護士が浮かんだ。光市母子殺害事件においては、安田弁護士らの荒唐無稽な弁護が批判されている。しかし、主流マスコミやネットだけでなく、『光市事件 弁護団は何を立証したのか』(光市事件弁護団インパクト出版会、2008)ぐらいは読んで、自分で調べてほしいものだ(どちらの言い分が本当かは、私にはわからないけど)。また、安田弁護士は、強制執行妨害事件で有罪になったが(ウィキペディア安田好弘」(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%AE%89%E7%94%B0%E5%A5%BD%E5%BC%98 )参照)、これももしかしたら、何らかの陰謀があるのでは、と思ってしまった(『国策捜査 暴走する特捜検察と餌食にされた人たち』(青木理、金曜日、2008)をご一読)。

最後に、アメリカなので気になったが、被害者に黒人はいなかった。黒人はそもそも泣き寝入りなのだろうか?

*文中敬称略。