「スキャナー」によると、2012年3月29日に死刑が執行された死刑囚「3人の場合、判決確定から執行までの期間は3年7か月~5年1か月。執行の順番は確定順が原則だが、29日時点の死刑囚132人のうち、確定から5年以上の死刑囚が半数近い61人に上っている」という。
続けると、「これらの死刑囚の執行が回避されてきたのは、再審請求などの事情があるためだ。中には、再審請求を繰り返すなどした結果、収容期間が30年以上に及んでいる死刑囚も4人いる。罪を認めたり、再審請求を支援する弁護士がいなかったりする死刑囚が先に執行されていく状況」がありそうだ。
実は、これも、死刑の致命的欠陥の一つである。
それなら、再審請求にかかわらず死刑を執行すればいいかというと、それは国際的非難が強く、日本の地位を著しく下げるだろう。日本も批准している市民的及び政治的権利に関する国際規約第6条第4項には、「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦または減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦又は減刑は、すべての場合に与えることができる」とある。刑事訴訟法第435条第6号には「原判決において認めた罪より軽い罪を認めるべき」とあり、また「無罪(中略)を言い渡し」ともある。どちらの再審の場合にも、市民的及び政治的権利に関する国際規約第6条第4項も当てはまると解するべきで、再審請求にかかわらず死刑を執行することは、難しい。
ところで、無期懲役の場合の再審請求はどうか。刑事訴訟法第442条によると、「再審の請求は、刑の執行を停止する効力を有しない」とある。つまり、懲役刑を執行しつつ再審請求をするのが原則だ。一方、死刑囚は、再審請求時には、言葉は悪いが、のうのうと生きていられる。これは不公平だろう。
というわけで、再審請求時の不公平からも、死刑は妥当ではなく、他の刑罰に代替すべき、となる。
ちょっと勉強すれば、この程度のことはわかるが、読売新聞の社説はわかっていなかった。
2012年3月30日社説「死刑執行 法相が重い職責を果たした」(http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20120329-OYT1T01144.htm )には、「死刑制度に否定的で初めから執行しないと決めているのなら、政治家として法相の職を引き受けるべきではなかっただろう」などと、法務省の仕事の全体も知らずに(法務省HPは、http://www.moj.go.jp/ 。死刑だけのわけがない)、ネットレベルの(プロとは思えない)愚痴に終始している。「スキャナー」がせっかくいい材料を書いたのに、それを生かせない社説は誠に残念である。