清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

芸人から 保護と扶養を 考えた

読売新聞東京本社版2012年5月21日朝刊13版25面に『週刊現代』の広告(①)が、同27面に『週刊ポスト』の広告(②)が載っている。どちらも生活保護について記事を掲載しているようだ。

まず①。文字を変えているとはいえ、「不正受給する輩も続出」(白い字)の後に、「全国に209万人!」(黒い字)というのはおかしいんじゃないか? 209万人が不正受給していわけでもなかろう。

次に②。「エアコン、携帯、海外旅行もOK」が問題とも言えない。高齢者や障害者は、暑さで死ね!とでもいうのだろうか? 就職活動において連絡を取るための携帯すらいけないのか? 旅行は行けないと私は記憶しているが、仮に行けても問題があるとは言えない。何かの本で読んだが、年1回も旅行に行けないのは、貧困だからである。また、海外旅行が絶対高いとも言えないし(ましてや、円高傾向)。

これだけ生活保護が注目されるのは、いわゆるその他の世帯(勤労世帯が主)の受給者が増加したこともあるし、吉本興業の芸人が年収5,000万円もあるのに、その母が生活保護を受給していたらしいことが伝えられたこともある。

その他の世帯については、読者の皆様も必死に働いて雇用を創出するしかないが、吉本興業の芸人の件は、なかなか難しい問題なので、もう少し考えてみる。

私としては、芸人の年収如何にかかわらず、その母が生活保護を受給しても悪いとは思っていない。死んだり犯罪をされるよりはましだし、時間や事情の問題もあるからである。

しかし、事は単純ではないのだ。

私の手元にある我妻栄/有泉亨『民法③』(一粒社、1956)p211には、「わが生活保護法は、『民法に定める扶養義務者の扶養』は、すべて」生活保護「法に優先するものとしている(中略)このような基準が果たして妥当かどうか疑問がないわけではない」とある。もちろん、「私有財産制度を認める国家組織においては、国民の生存を保障する国家の資力にもおのずから限界がある。したがって、近親の間においては、各自の財産により私的扶養を国の扶助に優先させる」(『民法③』p210)ともあるが、読んだ限りでは、生活保護法第4条第2項の規定に否定的である。

一方、内田貴民法Ⅳ』(補訂版、東京大学出版会、2004)p291,292を見た限りでは、学説では生活保護法第4条第2項を事実上の順位(ケース・バイ・ケース)とするのが多数説の一方、実務は受給要件とし、著者の内田さんもそれを支持するという感じだった。

おそらく、時代の違いなのだろう。膨大な赤字国債がない時期は、憲法第13条に規定された個人の尊重を優先させて、なるべく受給させようという解釈を採る学者が多かったようだ。一方、膨大な赤字国債の現実がある現在では、内田さんのように、受給要件とし、受給を抑制させようという解釈を採る学者もいる、ということである。

というわけで、吉本芸人の件は、生活保護民法の扶養義務をどう関連付けるかの問題を(も)提起しているのである。