清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

読まないで 批判した鈴木 亘さん

日経ビジネスオンラインに、広野彩子さんの「働けるのに働かない人に、お金をあげてはいけません! 鈴木亘学習院大学経済学部教授と生活保護問題を考える」(2012年7月19日(木)。全7ページ。http://business.nikkeibp.co.jp/article/interview/20120712/234420/ )と題する記事があった。鈴木亘さんは専門家なので概ね正しいのだろうが、疑問点続出の内容だった。以下、日経ビジネスオンラインの記事を主に引用しつつ、検討する。

まず、「リーマンショックで「若者の職がない」ということから、緊急措置として、生活保護の申請を働く能力がある人にまで認めることを促す通達が出され、堰を切ったように若者の生活保護受給をぐっと増やす方向に行った。言わばパンドラの箱が開いてしまったのです」が事実認識の間違い。ずっとひきこもりでもしない限り、勤務先の雇用保険の問題のはずである。被保険者期間の問題だったり(「ハローワークインターネットサービス『雇用保険手続きのご案内』」(https://www.hellowork.go.jp/insurance/insurance_guide.html )参照)、そもそも雇用保険に加入していない事業体だったりの問題であり、だから「緊急措置」だったはずなのだが(「雇用保険-情報局『【雇用保険未加入トラブル】』(http://www.koyou-hoken.net/trouble1.html )をご一読)。また、「不正受給者という「お化け」も多く出てきてしまった」こととの関連性も示していない。

「ハウ・ツー・ゲット生活保護」という感じの本を、色々な方がたくさん書いておられますね。「派遣村」で知られる湯浅誠さんをはじめとする社会運動家は、「低所得者は全て生活保護で救うのが正義」、とお考えのようですから」とある。たしかに、その中に安易な本もあろう。しかし、湯浅さんの本の内容で、安易な内容は見当たらなかった。といっても、私が持っているのは『貧困襲来』(山吹書店、2007)と『あなたにでもできる!ほんとうに困った人の生活保護申請マニュアル』(同文館出版、2005年初版)だけだが、「「低所得者は全て生活保護で救うのが正義」」という内容は見当たらなかった(他の支援の内容が問題といった趣旨の内容は散見される。たとえば、『あなたにでもできる!ほんとうに困った人の生活保護申請マニュアル』p123「安心感の伴わないセーフティネットは、本当のセーフティネットとは言えない」としてた制度を非難しているだけだし、また、p6で「本当に『困っている』あなたに」と、安直に受給申請しないようにする内容になっているのは、読めばわかる)。

生活保護の支給額は、支給されていない側が「こんなに努力して、嫌な仕事して稼いでいるのに、生活保護より俺の収入は低いのか」と感じる水準ですから。ならば無理して働かず、生活保護を受けた方が良いと思う人が出てくるのも無理はありません」もトンチンカンな問題意識で、だから使用者側は最低賃金にかかわらず給料・賃金を上げればいいだけの話。生活保護雇用保険の基本手当には、不当な労働条件から労働者(求職者)を守る機能を果たしているはずである。

生活保護を受給している若い方を調査しているときに、では1カ月後にもう一度会いましょうと言って別れ、ひと月経ってお会いすると、明らかに目から光が失われています」なんて、ただの主観にすぎず、公で発表する話ではないただの悪口である。鈴木さんの(申し訳ないが)下劣な人間性の発露、と判断せざるを得ない。

「頑張って働いても、その分だけ生活保護費が減らされるので、いわばタダ働きになってしまう」のも、おそらく給料・賃金が安すぎるのだろう。そこまで能力を付けられるかが難しいけど。

生活保護受給者に限って、企業から彼らへの求人が出るぐらいまでに最低賃金が下がればいいわけです。/最低賃金以下でも受給者は生活保護で生活が保障されていますから、十分生活していけるわけで、問題はない」は、トラックバック先(『学習院大学教授・鈴木亘のブログ(社会保障改革の経済学)』「NHKスペシャル生活保護3兆円の衝撃」との和解」(http://blogs.yahoo.co.jp/kqsmr859/ )に、「稼働層の生活保護受給者に限って、最低賃金の減額制度(適用除外)を使って、求人・求職側双方の就労マッチングのハードルを下げるべきではないか、という提案」として記されているか、受給しない人の就職難を招きかねない(受給者を優先して採用するインセンティブを与えている)ので、同一労働価値・同一賃金の建前の例外としても、合理的とは思われない。

「働ける「稼動能力層」を生活保護の対象にしてはいけないというのが問題の本質」も、違う。生活保護を受給しなくてもいいほどの良質な雇用が少ない、というだけの話。ラフな書き方だが、平均所得も減少傾向だし(厚生労働省HP「平成21年 国民生活基礎調査の概況 II 各種世帯の所得等の状況 1 年次別の所得の状況」(http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa09/2-1.html 参照)。

「実はかなり自由度が高い」生活保護、大変結構ではなかろうか。それだけ「健康で文化的な最低限度の生活」(憲法第25条)のレベルが上ったのだから。2点補足すると、第1に、インターネットや携帯電話は生活保護未受給の求職者でも必需品であるのは、経験者ならだれでも同意する。第2に、受給者の「タダ」が問題なのではなく、非受給者が「タダ」でないことの問題のはずだが、受給者憎しの鈴木さん、暴走してしまった。

もちろん、本エントリーで取り上げていない内容には、一理ある見解もある。しかし、他の状況は制度抜きで、受給者憎しの議論を展開しているのでは、「怒り」(鈴木さんのブログのタイトルの下のコメント参照)しか湧いてこない。

そもそもは、世帯では高齢者と傷病者で過半数であることと、医療扶助が約半数であることから話をはじめなければいけないはずだけど、ウケ狙いの鈴木さんにはできなかったかな?

*ウェブサイトは2012年7月19日アクセス。