清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

誤報より 罪が重いの 視点だよ

読売新聞2012年10月11日朝刊13版1面に、「iPS心筋移植」という、森口尚史さんが細胞移植を行ったという趣旨の記事がデカデカと載っている。後に誤報と認めたが(2012年10月13日朝刊13版1面)、誤報を認めたわけだし、現時点では罪は重くない(各メディアが検証しているので)。

もちろん、新聞で大事なことの一つは、情報が正確であることなのは承知している。しかし、(仮に)情報が正確でも、視点が悪いのでより罪が重い、ということもあるのだ。

その記事は、読売新聞2012年10月16日朝刊13版1面「生活保護 就労支援36%実らず」である。

記事によると、「生活保護の一種で就労に必要な資格を得るための『技能習得費』について会計検査院が調べたところ、23都道府県で2009~10年度に給付された約1万3500件のうち、約36%の約4950件(計約1億2000万円)で、(中略)就労に結びついていなかったことがわかった」という。

記事からデータを引用すると、「09,10年度に支給された技能習得費計約1万8000件(計約9億6000万円)のうち、23都道府県の約1万3500件(計約6億9000万円)を調べた。その結果、資格を取得していなかったケースが約1270件(中略)資格は取ったものの、就職していなかったケースが約3680件」だったという。

ということは、件数は約36%でも、金額は17.4%(小数点第2位四捨五入)である。どちらもよくはないけど、受ける印象はぜんぜん違う。

しかし、それより問題なのは、何の証拠も詳細な事例も示さずに「試験で落ちたケースもあったが、約半数は授業や研修を受けるのを途中でやめていた」だとか、「厳しい雇用情勢もあるが、就職活動を十分に行わず、繰り返し同費を申請するなど、自立への意思が充分でないケースも目立った」だとか書いたことである。

前者であれば、なぜ「受けるのを途中でやめていた」のだろう? 就職はしたのかしないのか? 

後者であれば、①「就職活動を十分に行わず」とあるが、具体的にどれくらいやれば「十分に行」ったかが示せていない。②「繰り返し同費を申請」と「自立への意思が充分でない」が結びついていない。向き不向きもあるので単純にはつながらない。

両者に共通することとして、そもそも資格が求人者のニーズに合っているのか、求人側に問題がないのか、が問われるべきである。不幸にも退職された方ならわかろうが、資格を取ったから即座にその資格を生かして転職できるわけではないし、そもそもの履歴を求人側が興味を示さなければ求職者が頑張っても就職できないものなのである。

つまり、今日の読売新聞1面は、求職者・受給者に(も)裏を取らず、会計検査院のデータを鵜呑みにして、求職者・受給者を叩くために書かれたと断言して差し支えない。相当悪質と評価して問題ないだろう。

なお、記事には、「同費の給付では就職の内定は条件ではなく自治体が必要性を認めれば支給される」という。しかし、もし内定しなかったら、求職者・受給者に払わせるのは酷だろう。求職者・受給者の選択を奪うことになりかねないのも問題だ。

どうも1面を書いた読売新聞記者は、人の痛みや、実際の転職などがわかっていないようだ。今すぐ記者の仕事をやめて、資格をとって就職してみろ! と言いたい。そしてその資格についてよく調べろ! とも。