清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

事実がね どうかが一番 大事だよ

朝日新聞デジタル「政党ビラ配布、元社保庁職員は無罪に 最高裁、上告棄却」(2012年12月7日16時14分。上からアクセス)によると、「休日に職場と離れた場所で政党ビラを配った国家公務員が、国家公務員法(政治的行為の制限)違反の罪に問われた二つの事件の上告審判決で、最高裁第二小法廷(千葉勝美裁判長)は7日、検察側、弁護側の上告をそれぞれ棄却した」という。

その2つの事件は、下記URLからご確認。
①有罪になった厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐として勤務する国家公務員(厚生労働事務官)の事件。平成22年(ア)957号国家公務員法被告事件。 http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121207172309.pdf

②無罪になった社会保険庁東京社会保険事務局目黒社会保険事務所に年金審査官として勤務していた厚生労働事務官の事件。平成22年(あ)第762号 国家公務員法違反被告事件。http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20121207163856.pdf

①の事件は、「平成17年9月10日(土曜日。「あの日は何曜日? 10000年カレンダー」2005年より。http://www5a.biglobe.ne.jp/%257eaccent/kazeno/calendar/2005.htm  )午後0時5分頃,東京都世田谷区(以下省略)所在の警視庁職員住宅であるAの各集合郵便受け合計32か所に,同党の機関紙である「しんぶん赤旗2005年9月号外」合計32枚を投函して配布した」事件。

②の事件は、「平成15年11月9日施行の第43回衆議院議員総選挙に際し,日本共産党を支持する目的
をもって,第1 同年10月19日(日曜日。「あの日は何曜日? 10000年カレンダー」2003年より。http://www5a.biglobe.ne.jp/%257eaccent/kazeno/calendar/2003.htm )  午後0時3分頃から同日午後0時33分頃までの間,東京都中央区(以下省略)所在のB不動産ほか12か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『いよいよ総選挙』で始まるもの)及び同党を支持する政治的目的を有する無署名の文書である東京民報2003年10月号外を配布し,第2 同月25日(土曜日。「あの日は何曜日? 10000年カレンダー」2003年より)午前10時11分頃から同日午前10時15分頃までの間,同区(以下省略)所在のC方ほか55か所に前記しんぶん赤旗2003年10月号外及び前記東京民報2003年10月号外を配布し,第3 同年11月3日(文化の日だから祝日で、休日)午前10時6分頃から同日午前10時18分頃までの間,同区(以下省略)所在のD方ほか56か所に同党の機関紙であるしんぶん赤旗2003年10月号外(『憲法問題特集』で始まるもの)及びしんぶん赤旗2003年11月号外を配布」した事件である。

この程度の内容ではよくわからないが、受け取る側からすると、公務員だとわかるものなのだろうか? 「行政の中立的運営が確保されるためには,公務員が,政治的に公正かつ中立的な立場に立って職務の遂行に当たることが必要」(①より)だとしても、受け取る側がわからない事件を処罰しても意味がない。

①と②の明暗を分けたのは、「被告人は,厚生労働省大臣官房統計情報部社会統計課長補佐であり,庶務係,企画指導係及び技術開発係担当として部下である各係職員を直接指揮するとともに,同課に存する8名の課長補佐の筆頭課長補佐(総括課長補佐)として他の課長補佐等からの業務の相談に対応するなど課内の総合調整等を行う立場にあり,国家公務員法108条の2第3項ただし書所定の管理職員等に当たり,一般の職員と同一の職員団体の構成員となることのない職員であったものであって,指揮命令や指導監督等を通じて他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼすことのできる地位にあったといえる」(①)か、「本件配布行為は,管理職的地位になく,その職務の内容や権限に裁量の余地のない公務員によって,職務と全く無関係に,公務員により組織される団体の活動としての性格もなく行われたものであり,公務員による行為と認識し得る態様で行われたものでもない」(②)かのようだ(傍線から判断)。ただ、、①の事件は、「本件配布行為が,勤務時間外である休日に,国ないし職場の施設を利用せずに,それ自体は公務員としての地位を利用することなく行われたものであること,公務員により組織される団体の活動としての性格を有しないこと,公務員であることを明らかにすることなく,無言で郵便受けに文書を配布したにとどまるものであって,公務員による行為と認識し得る態様ではなかった」とのこと。しかし、このような事実認定ならば、②と同じ結論のはずだし、有罪とするならば、「指揮命令や指導監督等を通じて他の多数の職員の職務の遂行に影響を及ぼ」(①)した事実が認定されなければおかしいだろう。同じ「国家公務員法110条1項19号(平成19年法律第108号による改正前のもの),102条1項,人事院規則14-7(政治的行為)6項7号」(①、②とも)違反かが問われている事件なのに、この結論の違いを正当化するのは難しい。

なお、②について引き続き検討すると、いわゆる猿払事件「の事案は,特定の地区の労働組合協議会事務局長である郵便局職員が,同労働組合協議会の決定に従って選挙用ポスターの掲示や配布をしたというものであるところ,これは,上記労働組合協議会の構成員である職員団体の活動の一環として行われ,公務員により組織される団体の活動としての性格を有するものであり,勤務時間外の行為であっても,その行為の態様からみて当該地区において公務員が特定の政党の候補者を国政選挙において積極的に支援する行為であることが一般人に容易に認識され得るようなものであった」とのこと。国家公務員法等が合憲であるとするならば、まだこの事実認定はわかるが、猿払事件と比べると①の事件の認定から有罪判決を導き出すのは無理だろう。

というわけで、本エントリーでは、①の有罪判決は不当、②の無罪判決は妥当と主張する。

*追記 2012年12月9日

国家公務員法第102条は「職員」とあり、国家公務員という身分を持つ人の犯罪となる。ただ、「職員」の定義は、すべての条文で同じでなければならない理由はない(「暴行」につき、刑法第95条、第208条、第236条で意味が違うのと似ている)。ゆえに、このエントリーで取り上げた判決や、当ブログの見解が絶対に成立しないわけではない。