清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

長期刑 懲役8年 妥当かな(2)

 

kiyotaka-since1974.hatenablog.com

 

の続き。
 
MSN産経ニュース「「茶番劇のような裁判」「法に裏切られた」…全国の交通事故遺族からも批判の声」(2013年2月19日19時34分。上からアクセス)によると、「「とても納得のいく内容ではない」-。重大な交通事故の被害者遺族たちは、最愛の家族を失った悲しみを胸に、これまでにも厳罰化の運動を続けてきた。しかし今回の判決も法の限界を示すものでしかなかった。遺族らからは、強い批判の声が上がった」という。
 
被害者の心情は理解するが、残念ながら、MSN産経ニュースに載っている被害者の心情は正当化できない。以下、引用しつつ、理由を述べる。
 
①「危険運転致死傷罪の新設に奔走した井上郁美さん(44)は、「判決が検察側の求刑した上限の10年にすら満たないなんて、茶番劇のような裁判だ」と痛烈に批判」、「長男を亡くした伊原高弘さん(41)は「危険運転致死傷罪に問えなかっただけでも問題なのに、その上量刑が求刑から減軽されるなんて、信じられない」と言葉を詰まらせた」、については、「長期刑 懲役8年 妥当かな」に書いたように、4月23日の事件と関係ない「4月11日と17日(①より)の無免許運転を、今回の事件の無免許運転と同じように評価するのが無理だからである。また、危険運転致死傷罪を適用しなかったのにそれと同じだけの刑罰を科すのも不合理である」、でおしまいである。
 
②「「そもそも起訴罪名が間違っている。無免許の居眠り運転で家族を奪われた行為が『過失』と認定されては報われない。危険運転致死傷罪の要件に無免許運転を入れ、少年の罪を問い直すべきだ」」(井上郁美さん)という見解も無理である。場合を分けて考えれば明らかである。前後するが、居眠りを「その進行を制御する技能を有しない」(刑法208条の2)その他と認定するのは無理である(認定できるなら示してほしい)。
 
改めて本エントリーを書いた理由は、無免許を「その進行を制御する技能を有しない」と解釈するのが不当だと思ったからである。
 
仮にこの事件を免許を持っている人が起こせば、自動車運転過失致死で、最高刑は懲役7年だろう(刑法第211条第2項。なお、居眠りだから危険運転致死というのは無理)。それが無免許だから「その進行を制御する技能を有しない」(刑法第208条の2第1項)となり、最高刑が懲役20年になる(刑法第12条。行為は1個と認定)というのは、事故を起こした場合に限り無免許で懲役をさらに13年加えるようなもので(実際の事件では無免許運転で懲役1年が加わる。道路交通法第64条、117条の4第2号。刑法第47条)、どう考えても重すぎるだろう(もちろん、無免許かつ「その進行を制御する技能を有しな」かった場合に刑法第208条の2を適用するなとは言っていない。無免許だから即座に刑法第208条の2を適用とはならないということ。また、今回の事件は少年が被告人なので、少年法52条により、自動車運転過失致死なら最高7年、危険運転致死なら最高10年となるが、それでも無免許だけでどれくらい刑罰を重くするかという問題はある)。
 
というわけで、亀岡の事件で刑法第208条の2第1項「その進行を制御する技能を有しない」などに該当しないとして、危険運転致死傷罪の適用を求めなかった京都地方検察庁の判断が妥当である。
 
読者の皆様も、被害者がどういう心情を持っているかを理解しつつも、実際の事件の認定や量刑の妥当性は別途検討した方がいいだろう。マスメディアも、被害者のコメントを報道するのは結構だが、被害者のコメントに妥当性がない場合は、その旨の解説をすべきだろう。