①テレ朝ニュース「公判で急性ストレス障害 元裁判員女性が国を提訴」(2013年5月7日13時50分。http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000004870.html
別媒体もチェック。②MSN産経ニュース「ストレス障害の元裁判員女性が提訴へ 「意に反する苦役」と国賠請求」(2013年5月3日12時14分。http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/130503/trl13050312160001-n1.htm
まず急性ストレス障害については、誰が「公権力の行使に当る公務員」(国家賠償法第1条)になるのかがよくわからないが、「遺体や殺害現場のカラー写真を見せられ」れば「不眠症や食欲不振になり、急性ストレス障害」(以上①)になることは予見可能のように思われ、過失(国家賠償法第1条)が認められそうな気がする。
次は「憲法の禁じる『意に反する苦役』」(②)について。「その意に反する苦役」(憲法18条)は「広く本人の意思に反して強制される労役」(芦部信喜『憲法』(岩波書店)第一一章、一、1奴隷的拘束からの自由の項目を参照。最新版での確認を乞う)のことだが、佐藤幸治『憲法 現代法律学講座 5』(青林書院、1995年。以下、佐藤幸治『憲法』)p586によると、「非常災害などの緊急の必要がある場合に、応急的な措置として労務負担が課されることがあるが(カッコ内略)、これは、災害防止、被害者救済という限定された緊急目的のため必要不可欠で、かつ応急的一時的な措置であるという点で、本条に反するものとはいえない。しかし、明治憲法下に見られた国民徴用のように、積極的な産業計画のために長期にわたって労務負担を課すことは許されない」とある。
裁判員制度の場合、「緊急の必要」(佐藤幸治『憲法』)や「緊急目的のために必要不可欠」(同)と言えるかは微妙(審理の遅延は救済の拒絶に等しいとは聞くが)、「限定され」(佐藤幸治『憲法』。なお、裁判員の参加する刑事裁判に関する法律第2条第1項参照)や「一時的な措置」(同)とは言えそうなので、前者を重視すれば憲法第18条違反、後者を重視すれば合憲となろう。日本の裁判所は違憲判決を出すことについて消極的とされるので、裁判員制度が違憲とはならないと予想する。