清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

法規制 よりも裁判 するべきだ

テレ朝ニュース「元少年Aの手記出版 遺族が法規制求め要望書(07/16 00:05)」http://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/000054789.html

)によると、「神戸連続児童殺傷事件の加害男性、元少年Aの手記の出版に対して、事件の遺族が自民党などに法規制を求める要望書を提出しました」という。
 
テレ朝ニュースの記事を読み進めると、「要望書では、加害者が事件について出版などをする際には被害者や遺族の同意を得ることや、違反した場合、利益を没収するとしてい」るという。
 
しかし、この法規制は、国民(市民)にとって重大な制約になるので、すべきでないと考える。
 
まず、一般論。表現することは、誰の同意も必要ない(著作権が絡む話は別論)。事件の加害者に限り被害者や遺族の同意が必要な理由が見いだせない。また、たとえば、テレ朝ニュースで紹介された遺族は、手記を書いているが(アマゾンで検索した結果はhttp://www.amazon.co.jp/%E5%9C%9F%E5%B8%AB-%E5%AE%88/e/B004LR9SM4/ref=sr_ntt_srch_lnk_1?qid=1437050244&sr=1-1
)、その内容につき不満があり場合に、被害者・遺族の承諾が必要とすると、加害者は表現できず、読者が真実を発見する可能性が低くなることが懸念される。
 
じゃ、被害者遺族に泣き寝入りを求めろ!と筆者が思っていると思っている人がいるならば、違う。

『絶歌』(元少年A、太田出版、2015)は未読なので内容はわからないが、仮に被害者の名誉を毀損する内容だったとして、「死者の名誉毀損を介して遺族の人格的法益(略)が侵害される場合があ」(内田貴民法Ⅱ』(東京大学出版会)p347。最新版での確認を乞う)り、「遺族に対する不法行為責任の成否を判断する際に考慮すべき要素として、ⅰ)死者への遺族の敬愛追慕の情は時の経過とともに軽減していくこと、ⅱ)年月の経過とともに歴史的事実探求の自由・表現の自由への配慮が優位に立つこと、ⅲ)公報された事実が虚偽であるかどうか」(同)が「遺族に対する不法行為責任の成否を判断する際に考慮すべき要素とし」(同)た、東京高裁昭和54年3月14日判決の「「落日燃ゆ」」事件」(同)の規範をあげている。テレ朝ニュースに書かれているように、新たに法規制を要請するということは、『絶歌』は、死者の名誉を毀損しておらず、遺族の人格権侵害があるというには難しい本だ、と推測してしまう。
 
もちろん、客観的な社会的評価(名誉毀損)でなくても、不法行為や人格権侵害は成立するかもしれないが、「「18年かけて平穏な生活を取り戻しかけていたところの出版で、再度精神的な被害を受けた」」(日本経済新聞電子版より)ことが、どれくらい評価されるかも難しい(落日燃ゆ事件のⅱ)の規範からは不法行為とするのが難しそう)。
 
だから法規制なのだろうが、それは前述のように重大な制約になるので、現時点までの遺族の人格的法益の侵害を扱った事件を参考にして、裁判をするしかないと思う。遺族には過重な負担なのは承知しているが。