清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

それならば みんな敬称 つけりゃいい

例によってツイッターサーフィンをしていると、日本報道検証機構の、以下のツイートを発見した。

 
「【記事紹介】読売新聞が、池袋の交通事故で加害者運転手を「容疑者」ではなく「元院長」と呼称した理由について、社会部デスクの名で記事を掲載しています」(2019年5月10日18時33分。https://twitter.com/GoHoo_WANJ/status/1126782232553672704
 
紹介された記事が、読売新聞オンライン「容疑者でなく元院長、加害者の呼び方決めた理由」(2019年5月10日20時26分。https://www.yomiuri.co.jp/national/20190510-OYT1T50294/
)で、それを検討する。
 
「逮捕や書類送検はされてい」なかったので容疑者の呼称を用いなかったのだという。
 
そして、「加害者に敬称を使うのは避けたかった」ので職歴を用いたのだという。
 
しかし、「刑事上の罪に問われているすべての者は、法律に基づいて有罪とされるまでは、無罪と推定される権利を有する」のが国際的な人権のスタンダードだから(市民的及び政治的権利に関する国際規約第14条第2項)、仮に現行犯でも敬称をつけるのに何ら差し障りはないだろう。また、職歴も事件と関係ない。一般の社会と同じようにすればいいだけの話である。
 
せっかくの社会部デスクである足立大さんの労作も、とんちんかんな話になってしまった。もっとも、これは、読売新聞だけではなく、すべてのマスメディアにおける問題だが。
 
呼称の問題は以上として、以下、気がついた点を。
 
(1)「SNSで「元官僚という『上級国民』だから逮捕されない」という誤った言説が拡散されたからか、国家権力への不信によるものかはわかりませんが」は、正しい。逮捕は「できる」(刑事訴訟法第199条第1項、第210条第1項、第213条)のであって、義務ではない。
 
(2)「「容疑者=犯罪者」という感覚の広がりです。犯罪者の印象を避けるために使い始めた「容疑者」が、30年たって犯罪者の代名詞のようになってしまっているとすれば皮肉です」という懸念はその通りだが、ならば一般社会と同じく敬称を用いればよい(前述の繰り返し)。
 
(3)そもそも被疑者段階で実名を報道すべきかという疑問がある。最近の『ポケット六法』(有斐閣)には載らないが、以前の版に司法統計があり、刑事手続きにおいて起訴されるのは約半数なので、実名報道すべき理由がわからない(起訴されない人の名前を報じてもしょうがない)。一方、社会的制裁を受ける場合があるので((2)で引用した文章も参照)、匿名報道には理由がありそうである。「公務員又は公選による公務員の候補者」(刑法第230条の2・第3項)に限って実名報道にするというのは良さそうである。