清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

生活保護 批判の解毒 この4本

お笑い芸人の親が生活保護を受給していたことに端を発した生活保護批判、しかし、私の知るかぎり、説得力のある見解は少なかった。そこで、生活保護批判の解毒剤というべき記事・本を3本(本は「冊」だが、記事の「本」に統一)紹介する。

① 日本弁護士連合会HP「パンフレット 今、ニッポンの生活保護はどうなってるの?」(http://www.nichibenren.or.jp/library/ja/publication/booklet/data/seikatuhogo_qa.pdf )

生活保護に関する偏見を正す意味では、解毒だが(不正受給についての説明や、「その他の世帯」の詳細な内訳などが大いに参考になる)、見解は鵜呑みにしてはいけない。

例えばQ1。「利用率は減っている」として、2011年度と1951年度を比較するのは間違いだ。せいぜい「2011年度の利用率は過去最高ではない」とすべきだった。後ほど紹介する②の「はじめに」pⅲによると、1951年度の保護率は24.2パーミル(「パーミル」については、Yahoo!辞書で。http://dic.search.yahoo.co.jp/search?ei=UTF-8&p=%E3%83%91%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%AB&fr=dic&stype=prefix パーミルの数値を10分の1にすれば、パーセントの数値。①のQ1では2.4%とあり、矛盾しない)だが、過去最低の保護率は1995年度の7.0パーミル。②の本の直近である2008年度が12.5パーミル。つまり、利用率・保護率は上昇傾向である。

②『ルポ 生活保護 貧困をなくすた新たな取り組み』(本田良一、中公新書、2010)

「ルポ」とはあるが、データも豊富で、貧困問題についての適当な説明が散りばめられており、必読文献だと思う。

とりわけ、p160の「過半数が三年未満」というところは読んでみよう。読者の皆様の想像とは異なり、割合早く生活保護から抜け出しているというデータが出ているので(「反故受給期間が短い世帯が調査対象から抜け落ち」(p161)ている欠点を指摘して、より的確にデータを分析している)。『民衆が語る貧困大国アメリカ 不自由で不平等な福祉小国の歴史』(スティーヴン・ ピムペア、明石書店、2010)も、読者の想像ほどの期間生活保護を受給しているわけではない様が読める。読者の想像ほど生活保護に頼っていないのは、おそらく万国共通のようだ。

③「生活保護のリアル」(みわよしこ、 ダイヤモンド・オンライン)(http://diamond.jp/category/s-seikatsuhogo )

受給者への丹念な取材、生活の難しさ(個人的には、第5回の、求職の難しさが印象的。「無料の求人情報誌に掲載されている求人も、あからさまに労働法に違反していることは多くない。しかし、実際に雇用された後で「労災保険料が支払われていない」「『社保完』と書いてあったが、社会保険料は実際には支払われていない」「掲載されていた給料が手取りではなく税込だった」といった問題が明らかになることは少なくない」がリアルで、このことからも、「その他の世帯」増加叩きはバーチャルで、まずい)などがわかるいい記事で、今後の展開が期待される。

④「医療費の裏ワザと落とし穴 第30回 生活保護費3.7兆円の半分は医療費 医療制度の歪みが生む長期入院の見直しこそ急務」(早川幸子、ダイヤモンド・オンライン)(http://diamond.jp/articles/-/21425 )

「「医療扶助」と呼ばれる医療費で、2010年度の生活保護費の総額3兆3296億円のうち、47%の1兆5701億円が医療費で占められている」だとか、「根本的な解決を図るなら、メスを入れるべきは医療扶助の6割を占める入院に関する費用だろう。中でも多いのが精神疾患による長期入院で、入院全体の約4割となっている」だとか、「医療扶助を押し上げる大きな原因は、こうした精神疾患や単身高齢者の長期入院だが、生活保護受給者に限った傾向ではなく、日本の医療制度の歪みが生活保護を通じて浮き彫りとなっていると考えるべきだろう」だとか、生活保護の医療扶助をきっかけに、日本の医療制度を考える上でのきっかけになる、いい記事である。

*ウェブサイトは2012年8月16日アクセス。文中敬称略