清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

「ザ・コーヴ」 取引か保護か 反日か

0.今日は水曜日。メンズ・デー、ということで、街宣活動を予告され上映中止に追い込まれたうわさの映画、「ザ・コーヴ」(コーヴ=入り江)を観た。以下、映画を観て思ったことなどを書いてみたい。

1.心配された街宣活動だが、映画館(フォーラム仙台)に着いた午前11時26分現在では、活動は一切なし。会場は、この映画館で一番大きい98人が定員のシアター。この映画館には、通常は、上映中、または上映予定の映画のパンフレットがあるものだが、「ザ・コーヴ」の話。そのかわり、2010年7月16日発売予定の光文社新書、『イルかを食べちゃダメですか?科学者の追い込み漁体験記』(関口雄祐著)の案内があった。それによると、「『THE COVE』(カッコ内略)の舞台だが、映画で描かれたのは漁のほんの一部」とある。しかし、表現は常に「ほんの一部」であるから、要らぬコピーである。圧力もあるのだろうが、映画を観る客に、映画に対してネガティブなパンフレットを置くのはいかがなものか。まだ観ていないのに視点を設定されかねないからだ。

2.さて映画本編。本映画の登場人物の1人、リック・オバリーは、いるかを使ったテレビ番組、「わんぱくフリッパー」に携わった元イルカ調教師なのだが、イルカは音に敏感でストレスをためやすいらしく、自分が調教したイルカが死んだのをきっかけに、野生のイルカを捕獲することに反対することになった。その他、反イルカ捕獲のメンバーが、年間約2万3千匹のイルカを殺すとされる日本の、和歌山県太地町に行って、イルカ殺戮の瞬間を撮り、世論に訴えようとするが…。

3.イルカ漁自体は、日本のみならず、アメリカでも、ロシアでも行われているそうで、大多数は、水族館に買われるようだ。外国はわからないが(同じ可能性がある)、日本の場合、水族館で飼われないイルカが殺され、食肉になるという(映画ではクジラと偽って売っているとあったが、反論があるという)。

4.ところで、なぜイルカを捕ってはいけないのか?「ザ・コーヴ」では(以下趣旨)、.ぅ襯は人と分かり合え、かわいそうだから、▲好肇譽垢鬚けるから(,般圭發靴討い襪箸蘯茲譴襪)、水銀含有量が多いから(それぞれのイルカによって違うという反論が紹介されていたが、水俣病(イルカとは直接関係ないが)を体験している日本人としては、反論を正しいとするのに躊躇を覚えた。もっとも、マグロなどの魚にも、イルカほどではないが水銀を含んでいるらしい)といった理由をあげていた。しかし、,老茲畆蠅砲覆蕕此癖かり合えなければ食べていいのか?)、△脇以に聞いてみないとわからない。もしイルカを捕ってはいけないことを正当化するには、の理由をもっと精緻化しなければならないだろう。

5.「ザ・コーヴ」の問題意識に沿うと、なぜイルカ漁は殺戮は野放しにされている(ように見える)のかというと、IWC国際捕鯨委員会)においては、イルカは小さいので問題にされないということのようだ。捕鯨賛成国、反対国、それぞれの立場があるので、エアポケットになっているようだ。

6.この映画で(不適当なことを承知であえて以下の語を用いるが)よかったのは、イルカが殺されるシーン。映画ではイルカを食べることをとかく悪く言うが、動物を食べるには、マグロだって牛だって殺して食べるのだ。このシーンを単に残酷と思うのではなく、人が生きていくにはこんなプロセスをたどるのだと理解すればよい。

7.映画を観て思ったのは、太地町の人をはじめとして、日本人はもっと取材に応じて自説を積極的に展開すべきであり、監督はそれをもっと詳しく流すべきであったということである。もっとも、劇場内のパンフレット(光文社新書とは別の)によると、太地町の人は、だまし討ちのような撮影に腹を立てているようだが、こればかりは両者の言い分を聞かないとわからないので、見解は保留する。ところで、太地町の人は、映画によると尾行をしたそうだが、本当だろうか?本当なら、盗撮同様威張れないんじゃないか(盗撮のほうが違法性はおそらく重いが、盗撮のおかげでイルカ漁の実際を知ることが出来たといえる。していいと言っているわけではなく、製作者が賠償義務を負う場合があることを否定しないが、映画を観る者にとっては製作者の勇気に敬意を表すべき側面がある)?

8.ところで、この映画が一時上映中止に追い込まれた理由の一つとして、反日映画であると聞いたことがあるが、観た限りでは、反日映画という評価も外れてはいない(映画の一側面である)。イルカの取引だって悪いはずなのに(むしろ、食べるわけでもないのに野生の動物を取引の材料にするほうが問題とも言える。もっとも、そのおかげで、われわれは動物により興味を喚起される)、映画の主要部分(清高の印象)が太地町におけるイルカ殺戮の盗撮関係だったからだ。

9.なお、「ザ・コーヴ」、フォーラム仙台では、7月9日が最終日(7月16日までやってます。お詫びして訂正します。2010年7月8日)。まだの人は、ぜひ。