第166回通常国会が開会している。開会日の1月26日に、安倍晋三内閣総理大臣が施政方針演説を行い、外務、財務、経済財政担当大臣の演説もあった。少々古くなったが、検討してみたい。なお、読売新聞1月27日朝刊(仙台では)11頁に安倍さんの演説の全文、ならびに外交演説、財政演説、経済演説の各要旨があるので、参照しました。
1、安倍内閣総理大臣の施政方針演説
(1)はじめに
「輝かしい戦後の日本の成功モデルに安住してはなりません」が、それがなぜ憲法改正(自由民主党憲法草案を前提とすると、基本理念や人権の意味まで変わってしまうかなり過激な改革になる)とつながるかさっぱりわからない。その他は一応検討すべきだろうが、実際の議論では、改革がいい方向につながるかはわからないな。
(2)成長力強化
成長力強化はたしかに大事だ。しかし、成長しなくても国民の生活が豊かになることも大事ではないか。たとえば、労働条件の整備(非正規雇用の規制など)は成長とは関係ない。
(3)再チャレンジが可能な社会の構築
まぁ、前から言われていることを言っていますな。一言言うと、非正規雇用の規制(有期雇用の制限、派遣業法の改正)に触れていないのではね。
(4)魅力ある地方の創出
地方分権がいいかどうかはわからないが、もしこの演説のとおりならば、地方間の格差は広まるだろう。これが本当にいいかは考えざるを得ないな。
(5)行財政改革の推進
「公務員の総人件費」を削減するのはよいが、公務員は本当に余っているのかはよくわからない。あとはとりたてて取り上げることもないな。
(6)教育再生
「公共の精神や自律の精神、自分が生まれ育った地域や国に対する愛着愛情、道徳心、そういった価値観を今までおろそかにしてきた」から、「いじめや子供の自殺をはじめとして、子供たちのモラルや学ぶ意欲の低下、家庭や地域の教育力の低下」の問題が生じたというのは爆笑もの。子供は大人になってやっと「公共の精神」などを理解する、「家庭や地域の教育力の低下」は労働時間の短縮で対処すべし、などの批判が可能だと思う。
「道徳教育の充実」をする暇があったら、学力アップのために他の科目にしたほうがいい。所詮道徳などTVを見てボーっとするだけだから。
「教員の質」が落ちたというが、その根拠は?「教員免許の更新制」より不祥事の都度解雇のほうがいいのではないか。「社会人の採用」は教育内容を考慮すると不要。結論としては、安倍さんは教育の「ど素人」(私は中島徹先生の「玄人のひとりごと」(ビッグコミックオリジナルに連載中)という漫画が好きで、そのキメ台詞を拝借しました)であるということだ。
(7)健全で安心できる社会の実現
やっと「長時間の時間外労働を抑制するための取り組みを強化する」というのがでてきた。支持団体の日本経団連の圧力に負けずにぜひ実現してほしい。
(8)主張する外交
尊敬されるためには、「日米同盟をいっそう強化」するのではなく、破棄して、憲法9条を頑なに守るほうがいいと個人的には思うが(条文上は自衛戦争を含むすべての戦争を放棄したと解されるほど世界でも類を見ない徹底した平和主義であるとするのが憲法学的な理解である)、日本国民の生存を考えるとやむを得ないか。
「安全保障理事会の常任理事国入り」は戦争で勝たない限りたぶん無理。これはあきらめたほうがいいかな。
(9)むすび
「日本の「カントリー・アイデンティティ」(中略)(を)戦略的に内外に発信する新たなプロジェクト」って必要なの?それぞれがやればいいのではないか。
「多くの方々が、毎日寡黙にそれぞれの役割を果たすためにがんばっています」というところに安倍さんの本音が出ている。安倍さんが美しいと思う人は寡黙に役割を果たしている人であって、権利を主張する人ではない。生きていくうえでは寡黙なだけではダメなんだけどな。
「明治維新から近代日本を作っていった」ことは評価しても、憲法を60年以上守り、戦争で加害しなかったことはまったく評価しないというのもどうか。
2、麻生外務大臣の外交演説
「韓国との未来志向の関係を打ち立て」たければ、まず自身の創氏改名発言を謝罪されてはいかがか(正しいかもしれないが感情を逆撫でしたら「未来志向の関係」など打ち立てられないだろう)。
3、財政演説、4、経済演説、は略。