清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

ヒアリング 廃止論者の 勝ちですよ

0.YOMIURI ONLINE「死刑制度勉強会、識者と被害者が存廃へ意見」(2010年9月9日22時02分 読売新聞。2010年9月11日アクセス。http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20100909-OYT1T01006.htm
によると、「法務省は9日、死刑制度の存廃を含めて制度のあり方を研究する省内の第3回の勉強会を開き、有識者や犯罪被害者ら4人に対するヒアリングを行った」という。本エントリーでは、上記YOMIURI ONLINEの記事に基づいて(かぎカッコ内は引用)、廃止論者、存置論者の言い分をジャッジしてみたい。

1.まずは、「明大名誉教授の菊田幸一氏が『死刑の執行を停止する一方で、被害者遺族を納得させるためにも仮釈放のない終身刑を設けるべきだ』と主張。現行の運用についても、『刑場を公開するだけでなく、(死刑囚の独房が)24時間ビデオで録画される実態を知らせることなどが、制度の存廃を考える上で大事だ』と語った」ことについて。

「『仮釈放のない終身刑』」は、希望がない上に裁判の長期化をもたらしかねない(死刑や「『仮釈放のない終身刑』」では、いわゆる引き伸ばしの動機付けを与える。無期懲役刑ならば、何年経てば出所できるかわからない(出所が早まる可能性がある)ので、引き伸ばしの動機付けがされにくい)のでダメだが、存置論者が強い現状では、仕方ない。「『(死刑囚の独房が)24時間ビデオで録画される』」ことについては、自殺防止などのメリットがある反面、プライバシーがないという問題もあり、啓発されるコメントである。

2.「もう一人の反対派は日本弁護士連合会の道上明・副会長。過去に死刑囚4人の再審無罪が確定したことなどを挙げて、現在の制度には不備があると主張」について。

YOMIURI ONLINEではわからないが、「不備」は正しい。(杆郢里離潺垢悩枷修鯊任狙擇譴訐度(オウム真理教教祖の事件を想起)は、死刑という人の生命を奪う刑罰で適当かという疑問があるし、⊃欺顛獲?里燭瓩寮簑佚三審制もないし、K ̄人僂量未任蓮潔く罪を認めた者の方が早く執行される可能性が高い(「死刑を言い渡されたいかなる者も、特赦または減刑を求める権利を有する。死刑に対する大赦、特赦、又は減刑は、すべての場合に与えることができる」(市民的および政治的権利に関する国際規約第6条第4項)ことからすると、どんなことをしても死刑を免れようとした者の方が執行されにくい側面がある)、といった欠点が死刑制度にある。ここでも廃止論者が一本取ったようだ。

3.「死刑の存置を求める全国犯罪被害者の会岡村勲・代表幹事は『世論調査では85%以上が制度を支持している。日本には因果応報の考えがある』と語った。刑場の公開については『死刑はかわいそうと情緒的に見られても困る。刑場を見せるなら、殺人の現場の悲惨な写真も同時に公開するべきだ』と訴えた」ことについて。

(1)世論調査については、質問に問題はあるが(「どんな場合でも死刑を廃止すべき」VS「場合によっては死刑もやむをえない」)、一説によるとどんな質問をしても廃止論者がほとんどいないそうだ。しかし、人権問題は、多数が支持すればそれでいいのか、といった疑問がある(少数者の人権をも守るべきという側面があるので)。(2)「『日本には因果応報の考えがある』」については、死刑を廃止した国にもあるんじゃないの?(3)「『死刑はかわいそうと情緒的に見られても困る。刑場を見せるなら、殺人の現場の悲惨な写真も同時に公開するべきだ』」について。私は執行された死刑囚の写真を見たことがあるが、首にくっきりと痣ができていて、「『悲惨』」でないとは言い難い。人の命を奪うのだから、殺人も死刑も「『悲惨』」であるとの反論が可能である。もし殺人の現場のみが「『悲惨』」であり、死刑が「『悲惨』」でないとすれば、首を絞めて殺した場合に限り刑罰を科さないようにすべきであろう。以上検討したが、岡村説は崩壊している。

4.「元検察官の本江(ほんごう)威憙(たけよし)氏は、犯罪者の取り調べをした経験から『死刑制度には犯罪を抑止する大きな力があると思う』と述べた」という。たしかに、死刑を言い渡された者に対する特別予防の効果があるのは否定できないが、私の知る限り、一般予防の効果があると証明した研究はひとつもない。元検察官は、刑事政策の学会にでも入って、発表したのだろうか?以上、本江説も根拠が見出し難かった。

5.以上を検討した結果、ヒアリングは、廃止論者の完勝であった。いろいろな事情があろうが、廃止している国が多いのも、それなりに理由があることのようである。

*なお、このエントリーは、浜井浩一『2円で刑務所 5億で執行猶予』(光文社新書、2009)を参照しました。