今日の日本経済新聞朝刊1面(仙台では)に、『ニッポンの教育―第1部 機能不全の実相◆ 岾悗个覆ぞ標?押廖戮載っていた。また、42面に関連記事が載っていた。
結論から言うと、はっきり言ってバカバカしい出来だが、日本経済新聞はビジネスマン必読の新聞であり、影響も大きいので、どこが「バカバカしい」かを追究してみたいと思う。
1、1面、『ニッポンの教育―第1部 機能不全の実相◆ 岾悗个覆ぞ標?押廖
(1)まず、神奈川県の教育委員会の調査によると、仝立高校2年生の51%が学校以外でまったく勉強せず、県立高校2年生の8割以上が1日の勉強時間が1時間に満たないそうだ。
しかし、この記事には2つの疑問がある。
(ア)「学校以外でまったく勉強せず」とはどういうことを言うのだろうか。図書館で勉強することは学校で勉強することなのだろうか。また、勉強時間が少ないから、その人の成績が悪いといえるかはわからない。
(イ)後に、「かつての学生は授業をさぼっても本を読み、仲間と議論した」として授業をさぼることを肯定的に書いているが、これなら学校以外で勉強しなくても授業はきちんと受けている高校生のほうがマシともいえる。
(2)次に、「履修漏れでは、世界史を学ばない高校生がいることがかつての受験生を驚かせた」そうだが、この記事は私を驚かせた。というのは、世界史の必修は1994年の高校入学生からのはずで、かつては世界史は必修でなかったからである。世界史を学ばなかったことはそんなに問題なのだろうか。
(3)第3に、労働政策研究・研修機構の調査によると、フリーターや就職しない大学生について、「多くの大学の就職担当者が「職業観の欠如」「無気力」を指摘」しており、「一方で新入社員採用で企業が重視するのは「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」「主体性」」だそうで(日本経団連調査)、「学びからの逃避は働く意欲、社会を生き抜く力の喪失にもつながる」という風に展開している。
しかし、この展開も、以下の点でおかしい。
(ア)フリーターや就職しない大学生について、何故に「職業観の欠如」「無気力」を指摘するのだろう。フリーター(アルバイトやパートで呼ばれているものが主な定義。有期契約や1日の労働時間が少ない場合が多い)は企業が条件を提示しているからフリーターなのだ。「職業観の欠如」というが、日本で通用する「職業観」は、何がなんでも大学卒業時に就職を決めなければいけないということぐらいだ。でも、それは絶対視する必要があるのか(回り道がそんなにいけないのか)。「無気力」なのは事業がその学生にとって面白くないことも原因ではないのか。なんでもフリーターや就職しない大学生のせいにしてはいけない。
(イ)「一方で新入社員採用で企業が重視するのは「コミュニケーション能力」「チャレンジ精神」「主体性」」だそうだが、これは学ぶことで身につくといえるのか疑問である(本田由紀『多元化する「能力」と日本社会―ハイパー・メリトクラシー化のなかで』NTT出版参照)。このことから、「学びからの逃避は働く意欲、社会を生き抜く力の喪失にもつながる」とはいえないのではないか。
(4)最後に、補習の原因を「2002年に学習内容を3割削減した現行学習指導要領」などのゆとり教育のせいにしているが、そういえるか疑問である。取り上げられている湘南工科大学の受験科目は何か?それが明らかでないとゆとり教育のせいにはできない。
2、42面の関連記事
国際教育到達度評価学会(IEA)によると、数学の勉強が楽しいかを中学2年生に訊いたところ、強くそう思うがわずか9%だったそうである(平均29%)。また、テレビやビデオの視聴時間は日本は平均2.7時間(平均1.9時間)で、これらから理数嫌いや勉強意欲の低下を指摘するが、これも早計。数学の勉強については諸外国との授業方法などの比較を載せるべきだし(日本の授業の進め方が悪いことも原因のひとつかもしれない)、テレビなどを見たからといって何故に意欲がないといえるのだろう(要は中身の問題)。