最近読んだ本から。
1.『父親になる、父親をする 家族心理学の視点から』(柏木恵子著、岩波ブックレット811、2011)
最近はイクメンブームだそうだが、それは育児をする男性が少ないことの裏返しである。しかし、父親が子育てをすることは、人間の進化の賜物であり、父親にとっても、家族にとっても、社会にとってもいいことである、というのが主旨。
参考文献もあるので、とっかかりとしてよく、一読を勧めたい(とりわけ、10代、20代)が、「終章」で、男らしさや女らしさについて書かれている。
男らしさ女らしさというのは、保守派が好んで使う言葉のように思う(反証大歓迎)。しかし、その結果が、男が人間的に成長しなかったり、男女差別だったり、家庭崩壊だったりしたら、大変だ。
保守派の主張を頑なに聞くことは、家族のためにも、日本のためにもならないようなのである。
2.『所沢高校の730日』(所沢高校卒業生有志、淡路智典責任編集、創出版、1999年)
1990年代後半に、埼玉県立所沢高校において、卒業式や入学式が分離するという事態が生じた。その時、在校生、卒業生が、どのように悩んだか、ということが主内容である。
赴任した校長が、所沢高校の伝統とされる、話し合いを無視して、学習指導要領に基づいた式典を強行しようとしたことがきっかけだとか。
校長先生も、教育委員会などの圧力があり、学習指導要領に従った式典をすることに、多大なプレッシャーがあったものと思う。
しかし、(可能な限り)生徒が決めるというのは、いいことのはずである。自分で決めるということは、社会で生き抜くために大切なことだからである。学習指導要領などを盾にとり、生徒の決断をスポイルしてしまうことは、生徒の人生においてもプラスだとは思えない。
ところで、『所沢高校の730日』p119の写真によると、「天の声 埼玉県立所沢高校はホウレン草やお茶よりも有害な赤旗ダイオキシンだ!!」だとか、「反日朝鮮系」だとかの横断幕がある。また、共産党の関与を匂わせるマスメディアもあったとか。本当のところはわからないし、右翼にも表現の自由があるが、たかが生徒参加の式典に、何でこんなに熱くなるのだろう? 日本人の育成を真剣に考えたことがないのではないか?
3.どちらにしても、いわゆる保守派の言動は、日本国をスポイルする方向に作用しているのではないか、という疑いはぬぐえず、20世紀後半も21世紀初頭も変わらないようだ。