なんと、カルロス・ゴーン被告人(強調のためこの呼称を用いた)が、日本を無断で飛び出し(保釈の条件として海外渡航を禁止されていた。読売新聞2020年統合版13版39面)、レバノンに行ったそうだ。
それについて、今日の読売新聞は、各方面への責任を問う内容になっている。
それは問題ないのだが、以下2文は検討すべきだと筆者が思ったので、検討する。
第1に、1面にある社会部・間野勝文記者の解説。
それ(ゴーンさんの逃亡。筆者注)を許した裁判所と弁護人、出入国管理体制の甘さや責任も問われる。/今回のような事態を防ぐには、被告[原文ママ]の財産の大部分を占めるほどの高額な保釈金の設定や、全地球測位システム(GPS)による監視など、制度の欠点を補うための議論が必要だろう。
第2に、13版39面にある、「元東京地検特捜部検事の高井康行弁護士の話」。
以下に保釈保証金を高額にして厳しい保釈条件をつけても、逃走は防げないという制度上の欠陥が明らかになった。GPS(全地球測位システム)を活用して監視を強めたり、保釈中の逃走を罰する法改正をしたりといった、新たな制度の導入が不可欠だ。被告をコントロールできなかった弁護士にも職業倫理上の責任がある。(略)
GPSの監視は筆者も賛成である。裁判に出頭してもらわないと困るので海外渡航禁止などの条件をつけるわけだから、GPSで場所を把握することに合理性があるからである(似たようでも、性犯罪者の出所においては更生の妨げになるからやるべきではない(付けられること自体は愉快ではないから))。その他の改正案も一案だと思う。
しかし、どちらも弁護人に責任があるとするが、それはどうなのだろう。
高井康行弁護士の話に「職業倫理上の責任がある」とあったので、日本弁護士連合会HPの「弁護士職務基本規程」(https://www.nichibenren.or.jp/library/ja/jfba_info/rules/pdf/kaiki/kaiki_no_70_160525.pdf)をざっと見たが、ゴーンさんの弁護士は、ゴーンさんの保釈を勝ち取っていることから、特段の事情のない限り、弁護士職務基本規程第47条をきちんと守っているといえる。その他、高井弁護士の言う「職業倫理上の責任がある」根拠を見いだせなかった。結果が悪いのは問題も、テキトーなことをかました高井弁護士さんは廃業するしかないだろうなぁ。
というわけで、読売新聞は、弁護士の対応も問題にしたいようだが、その根拠は無く、ただの弁護士叩きで、市民にとって有害であることが確認された。