2022年7月12日に放送された、NHK総合「クローズアップ現代」をたまたま観た。その模様は下記リンクから。
会社が苦境であるがゆえに、労働組合が推す政党ではなく、自由民主党に入れようというのはそれなりに理解する。
しかし、自由民主党は、日本経団連が唯一と言っても支持する政党である。例えば、「主要政党の政策評価 2021」
http://www.keidanren.or.jp/policy/2021/088.pdf を見ると、与党の政策を「高く評価できる」とし、最後は「期待する」で締められている。そして、自由民主党の政策について多くのスペースを割いている。それはいいが、そうなると、労働組合の言い分はたぶん聞かれないであろう。誰であれ、経営者というものは、費用にすぎない労働者の賃金など上げたくないのである。日本労働組合総連合(連合)の芳野友子会長が自由民主党と接触すること自体は悪くないが*1、おそらく限界があると予想する。
それはさておき、注目すべきは、以下のところ。
有権者が野党に新たな役割を期待するようになっていることを示す、最新の調査もあります。京都府立大学の秦正樹准教授が、去年の衆議院選挙の際、4,100人を対象に行った調査です。
新しい野党があるとすれば、どんな野党に投票したいかと聞いています。このグラフは、右に行くほど望ましい、左に行くほど望ましくないことを示しています。与党への姿勢を聞いたところ、原則対抗という姿勢よりも、連立政権を組んだり、是々非々路線というのを望む傾向が見られました。(ここまでが、桑子真帆キャスターのアナウンス)
政治行動論が専門 京都府立大学 秦正樹准教授
「分析を間違えているんじゃないかと思いました。何度も何度もデータを確かめて。10年前は、批判する野党がすごく好まれていたはずなんですね。有権者は『それがあるべき姿だ』と言っていたわけです。それが10年後の今、むしろ左の人の方が常に怒っていて、『何をそんなに怒っているんだ』と、『前向きじゃない』と。『怒りは何の得も生まない』というけれども、そういうイメージが相当あるんだろう。
その反射的な反応として1つあるのは、日本維新の会、国民民主党がやっているような与党に対して反対するところは反対するけれども、(部分的には)賛成する。いわゆる是々非々路線というものが、今までなかった路線の1つとして存在する」
実際は、どの野党も「『与党に対して反対するところは反対するけれども、(部分的には)賛成する。いわゆる是々非々路線』」であることは、国会の法律案の賛否を調べればわかるだろう*2おそらく、伝える側が、きちんと伝えてないからだと思う。これも筆者の調査能力のなさを許してほしいのだが、試みに「立憲民主党 与党案 賛成」をツイッターで検索した結果を示すので、各自で調べてほしい。
「『10年前は、批判する野党がすごく好まれていたはずなんですね』」というのは実は示唆的で、10年前の野党は、自由民主党であり、公明党である*3。
何が言いたいかというと、伝える側が、自由民主党や公明党、ならびにそれを支持する人に有利なことしか伝えていないのではないか、ということである。現在のあきらめや(イメージとしての)是々非々路線支持と、10年前の「『批判する野党がすごく好まれていた』」の根本は同じではないだろうか。
メディアが事実を伝えることを重視すれば、現在よりは与党(自由民主党、公明党)の支持率が下がると筆者は根拠もなく予想するが、読者としては、メディアの報道を鵜呑みにするのではなく、とりわけ(現在の)野党の政治家のツイートでも探して、野党の主張を理解することもした方がいいかもしれない。