今日の読売新聞朝刊に興味深い統計・調査が2つあった。
1(1→2の順番は、私の新聞の読み方(1面→番組欄→社会面→(中略)→社説)によっている)まず30頁によると,昨年の死刑判決は過去最多の44人(地裁・地裁支部13人、高裁・高裁支部15人、最高裁16人)で、年末時点で未執行の死刑囚が90人を超えている。
2 読売新聞の世論調査によると、犯罪被害者の訴訟参加制度(当事者として裁判に参加する制度)の導入について賛成が68%(否定26%)、仮釈放を認めない絶対的終身刑(現在の無期懲役刑は、10年を経過した後に仮釈放される可能性がある。刑法第28条)の導入に賛成(「そう思う」「どちらかといえばそう思う」)が82%(反対12%)、死刑制度存置賛成(「存続すべきだ」「どちらかといえば存続すべきだ」)が80%(前回1998年調査より8ポイント増加。なお反対(「廃止すべきだ」「どちらかといえば廃止すべきだ」)は15%で前回調査より9ポイント減少)なのだそうだ。
これに対する私の感想は下記のとおり。
まず1について、死刑判決が増えたのは「凶悪事件の多発」「被害者感情を重視した厳罰化傾向」(同朝刊)などが原因だという。しかし、凶悪事件は多発しておらず(各種統計から明らか)、凶悪事件の手口を報道を通じて知ることが国民にとって容易になったことを原因として厳罰化していいのだろうか。また、「被害者感情を重視」して死刑判決を多発させていいのだろうか(殺人事件や強盗致死事件だけ優遇(有斐閣ポケット六法平成19年版別冊付録参照。最近の死刑判決の罪名は殺人罪と強盗致死罪しかない))?交通事故死でも死刑にしろとでも(現実には出来ない。刑法第211条など)?被害者が死刑を望まない場合は他の事情にかかわらず軽くしてもいい(刑法第9条、第10条第1項)?などの疑問がある)。
次に2についてだが、
(1)訴訟参加については私も賛成である(反対説もわかるが被害者の訴訟参加は当然だろう、とだけ言っておく)。
(2)仮釈放のない絶対的終身刑の導入は難しい問題だと思うが(受刑者の希望を奪うことがはたしていいのか疑問に思う反面、ハワード・ぜア『終身刑を生きる―自己との対話』(現代人文社)を読むと反省させるには有力だとも思う)、賛成がこんなに多いと本当にわかって賛成しているのかどうか疑わしくなる。
(3)いくら凶悪事件が多発しているからって(厳密に言えば凶悪事件の手口を知ることが容易になったからって。上記「まず1について」以下参照)、死刑存置賛成が80%とは、死刑制度についての国際的な状況を知らな過ぎるし、仮に知って賛成しているとしたら、心の醜さが出ているのではないか(ちょっと感情的な表現になるが。もちろん、存置賛成説もそれなりには理解しているつもり)。安倍政権が「美しい国」を目指すのならば、まず、死刑廃止法案を可決することに全力を尽くすべきだろう。