清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

幹雄さん 学者としては 失格だ

岩波書店「世界」10月号に、河合幹雄さんの「公訴時効廃止は被害者のためになるのか」という論文があった。『日本の殺人』(ちくま新書)など、最近精力的に著作を発表している河合さんが書いた論文を検討したい。

主旨は、公訴時効廃止が被害者のためになるかどうかはわからず、被害者に対するサポートを充実させたり、今までの法務省の政策の成功例をもう1度見直すべきであるというもの。この論旨自体はありうる。

詳細を検討すると(ページ数は「世界」2009年10月号のそれ。なお、メモの間違いで、一部間違っているところがあるかもしれません。ご了承ください)、

「被害者が持ち出されたとたんに起きる思考停止」(p58上)は私も感じる。

「反対意見を表明している、被害者と司法を考える会の片山徒有(ただあり。清高注)氏」(p59上)がヒアリングから外されているので不公平という指摘も鋭い。

日本の「殺人事件の検挙率は九五パーセントから九七パーセント」(p60上)は、後述。

「被害者を救うというテーマは、狭い法的思考だけで考察してはならない典型的な課題」(p62下)も大事な指摘。

p63によると、被害者遺族には3つのカテゴリーがあり、厳罰化を望む者、望まない者、サポートがある者に分かれ、サポートがある者はメディアには出て来ず、声が伝わりにくいが、参考にすべきだという。これもありうる。

問題はこれから。

「知識人には実態を伝えたかったが、大メディアでは、犯罪増加否定を発表することを、私自身が控えてきた。警察官の増員も刑務所の増築も、別の理由で必要だったからである。犯罪増加を理由にその予算を得ようとする動きに水差すことは決して正しいとは思えなかったからである。このことは換言すれば、官僚は国民には、事実は伝えず、政策を説明する適当な言説を用意して信任してもらえばよいという手法を取ってきており、私もそれを受け入れたということになる」(p64下)はトンデモ発言だろう。増員や増築の理由がわからないので何とも言えないが、犯罪が増加していないならば、不要で問題はなかろう。財源も有限なのに、現実(研究結果)を伝えないで、己の欲望の(?)ために言説をねじ曲げるのでは、学者失格だ!官僚の問題ではない!

トンデモ発言はさらにエスカレート。たしかに、「犯罪がゼロで冤罪がゼロなどといった注文をする側自体が未成熟」(p65上)なのはわかるが、「殺人検挙率六〇パーセントで、犯罪発生率も」「高く、さらに、死刑を廃止したといいながら現場で逃げる窃盗犯を背中から射殺するような欧米諸国の例によることを止めるべきである」(p65上)などという戯言をほざいている。犯罪検挙率や発生率の高さ(低さ)と死刑廃止(存置)が相関関係にあるなど聞いたことないぞ(あれば、中国やアメリカは犯罪検挙率や発生率が低い)。窃盗犯の射殺は死刑廃止と関係ない(日本では警察官職務執行法の問題)!論点ずらし、根拠薄弱、ともに学者失格と言われても仕方のないレベルだ。

河合さんの本も立ち読みしたが(『日本の殺人』)、このエントリーで引用したレベルで、はっきり言って読むに値しない。買わないこと、古本屋に売ることは、必須だろう。