清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

ゲーテがね 語学の意義を 教えてる

 筆者は以前、適菜収・著『遅読術 情報化時代に抗(あらが。筆者補足)え!』(ベストセラーズ、2019)を読んだが(筆者がアップしたアマゾンレビューは、「 古典だけじゃ なくいろいろと 接すべき」(2019年7月24日)。

https://www.amazon.co.jp/review/R2X64JKMFJHR2F/ref=cm_cr_srp_d_rdp_perm?ie=UTF8&ASIN=B07NYVFZFM )、「『これまで読んだ本の中で一番すごい本は何ですか?』」*1という問いに、適菜さんは「ヨハン・ペーター・エッカーマン(年代略)が書いた『ゲーテとの対話』です」*2と答えている。そのことに触発されて、筆者は『ゲーテとの対話』(山下肇・訳、岩波文庫。なお、3冊セット(上・中・下)が出ている)を読み直しているが、考えさせられるところがあったので、以下、引用しつつ検討する。

 

 「われわれ自身の文学というのも、大部分は、イギリス文学が源流になっているのだよ」

 -エッカーマン山下肇・訳)『ゲーテとの対話(上)』p162

 

ゲーテはドイツ人なので、「われわれ自身の文学」はドイツ文学だが、ドイツ文学の源流が、シェークスピアをはじめとしたイギリス文学というのは知らなかった。日本に例えると、『源氏物語』のような外国の影響を受けていなさそうな小説もあるが(私見。適当な日本文学者の見解を探すことを勧める)、中国の影響を受けている作品が多そうである。

 

 「ドイツ語に対する興味は、」とH氏(「イギリスの工兵将校H氏」、すなわち「イギリスの技術者ハットン大尉のこと」。『ゲーテとの対話(上)』p165、p369註参照)は答えた、いま、イギリスでは大へんなもので、日ましに普及しておりますから、今では、良家の若いイギリス人で、ドイツ語を学ばないものはほとんど一人もいないといっていいほどです。」

 

 「しかし、われわれドイツ人は、」とゲーテは優しくこたえた、「その点に関しては、お国より半世紀は進んでいますね。私は、五十年前から英語と英文学にかかわってきたので、お国の作家や生活、制度などをとてもよく知っていますよ。私は、イギリスへ渡っても、他人の国にいる気がしないでしょうよ。

 

 -エッカーマン山下肇・訳)『ゲーテとの対話(上)』p166

 

H氏のコメントについて、現在の日本における韓国語と似ているというのは、韓国語を学習している筆者のひいきにすぎないか。しかし、若者の間で韓国カルチャーが浸透しているという内容の記事を見た記憶はある。また、ゲーテのコメントと併せてみると、こういうことが外国語を学ぶ醍醐味と言えそうなので、少々長めに引用した。

 

 「しかし、さっきも言ったように、お国の若い人たちがわれわれの国へ来て、ドイツ語の勉強をするのは、よいことです。わが国自身の文学が学ぶ値打ちがあるというだけでなく、今、ドイツ語がよくわかれば、他の言葉をたくさん知らなくても済むということも否定できませんからね。フランス語だけは別ですよ。社交用の言葉で、とりわけ旅行のさいには欠かせませんものね。だれでもわかるし、どこへ行っても、優秀な通訳の代わりに、フランス語で用が足りますから。しかし、ギリシア語やラテン語、イタリア語、スペイン語、となると、それらの国の最高の作品は立派なドイツ語訳でもちゃんと読むことができる。だから、よほど特殊な目的でもないかぎり、苦労してこれらの言葉を学ぶために、多くの時間をかけることはない。

 - エッカーマン山下肇・訳)『ゲーテとの対話(上)』p166、167

 

現代社会ではほとんど英語のことになってしまうが(翻訳であれ社交であれ英語があればいいという側面があることを否定できない)、上野千鶴子『情報生産者になる』(ちくま新書、2018)において、翻訳であれば日本語を学ぶのが有益だという趣旨のことが書いてある。日本語の翻訳は素晴らしく、世界の文学もわざわざ英語を学ばなくても読めるのである。日本語を母語とする者(日本国籍のある人とは限らない)は感謝しないといけないだろう。 ただ、最近は韓国の小説の翻訳も増えているとはいえ、筆者が聴くK-POPだと、すべてが英語、または日本語訳になっているわけではないので、「特殊な目的」として韓国語を学ぶことにまだ意義はありそうである。ただ音楽なので散文よりはその国の言葉を知っていた方がいいと思うが。

 

 K-POPを聴いたことがきっかけで韓国語をかじっている筆者のひいきが全開の内容になってしまったが、母語のみならず、外国語を学ぶ意義が感じられる文章だったので、引用して紹介した次第である。

*1:『遅読術 情報化時代に抗え!』p129

*2:同 p129