例の立憲民主党議員の「50歳14歳」発言に、なぜか『永遠の0』等で有名な人気作家・百田尚樹さんが吠えている。筆者は東京スポーツの記事で知ったのでまずは東京スポーツのサイト内で「百田尚樹」で検索した結果のアドレスを示す。
そして東京スポーツの記事で言及されたツイートを挙げる。
私は基本的には、失言には甘いタイプだ。たいていのことなら、謝ったら許したい。
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2021年6月8日
しかし、本多平直の発言は絶対に見過ごすことはできない。これははっきり言って議員辞職レベルの発言だ。
彼を辞めさせることができないとなれば、立憲民主党は終わってるね。二度と綺麗事を言うな! https://t.co/q4GRFEoHmh
「オッパイさわらせて」という軽口を言った財務省官僚に対しては、メディアは、総力を挙げて叩いたのに、「50歳でも14歳の女の子とセックスしてもええやんけ」と言った国会議員には、ダンマリかよ!
— 百田尚樹 (@hyakutanaoki) 2021年6月9日
日本の言論空間は狂ってる。
このツイートを読んだ地上波テレビや大手新聞の記者、何か言ってみろ!
まず前者。なぜそう思うのかが書かれていない。正直、頭の悪い投稿である。2番目のツイートは、セクシャルハラスメント*1のと政策論を一緒にしており、これも頭の悪い投稿である。こんなのが日本で売れているというだけで日本という国が悪く見られそうで心配である。
筆者は当初は産経新聞がスクープをしたということで肯定的に評価したが*2、日が経つにつれ、むしろ「50歳14歳」発言を非難する方に問題があると考えるようになった。冒頭にあげた百田尚樹さんだけではない。以下、いくつか問題あるツイートや記事を挙げる。
まずは産経新聞「『感覚おかしい』維新・松井氏が批判 性交同意発言」(2021年6月8日21時15分)
上記記事には、以下のようなことが書かれている。
記者から本多氏の発言に対する見解を求められた松井氏は「捕まるよ、そら。18歳未満とそういうことをしてはだめと決められている。本当に(本多氏の)感覚が恐ろしい」と述べた。
現行刑法は本人の同意があっても性行為が罪に問われる男女の年齢を「13歳未満」と規定。だが、中学生に対する性行為は、大阪府など多くの都道府県条例で同意があっても処罰対象としている*3
とのことだが、説明不足である。そもそもは「『年の離れた成人と中学生の子供に真剣な恋愛関係が存在する場合がある』」*4という話で、そういう場合は条例で罰せられない可能性が高い。産経新聞の記事は「法律の範囲内で条例を制定することができる」という憲法第94条を無視した話である。性行為の同意年齢が刑法第176条、第177条で決められているのに、条例で別途処罰できるのは、まさに「『年の離れた成人と中学生の子供に真剣な恋愛関係が存在する場合がある』」*5からである。最高裁判所昭和60年10月23日大法廷判決において、福岡県青少年保護育成条例第10条第1項「淫行」*6を性行為一般ではなく「青少年を誘惑し威迫し、欺罔し又は困惑させる等その心身の未成熟に乗じた不当な手段により行う性交又は性交類似行為のほか、青少年を単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められないような性交又は性交類似行為というものと限定して解」しているから憲法違反がないのである。この点につき最高裁判所昭和50年9月10日大法廷判決をも調べられたし。
産経新聞が目の敵にしている朝日新聞も取り上げよう。「『14歳と同意性交、捕まるのはおかしい』立憲議員発言」(2021年6月7日21時14分)
に「島岡まな教授『先進国だったら議員辞職くらいのレベル』」とあるが、これについては安田菜津紀さんの2021年6月7日22時53分のツイートで補足する。
島岡まなさんは《先進国だったら国会議員辞職くらいのレベルだ。海外の先進国では、対等な関係がなければ、恋愛とはみなさない》と指摘。本多議員の発言を「撤回したからいい」で終わらせるのであれば、これまでの自民党の不適切発言への対処と何ら変わらない。https://t.co/31SWOPRIlP
— 安田菜津紀 Dialogue for People (@NatsukiYasuda) 2021年6月7日
しかし、年齢が離れている=対等でない、というのはお粗末である。それを言ってしまったら、同じ年の人しか恋愛できなくなるだろう。
続いては、Yahoo!ニュース個人「『50歳が14歳に性交』擁護発言・なぜまかり通るのか?今こそ政治の責任を問いたい。」(伊藤和子。2021年6月10日10時8分)を取り上げてみよう。
伊藤さんは弁護士かつヒューマンライツ・ナウ事務局長だが、解説はお粗末だ。以下、引用しつつ検討する。
明らかに、本多議員のような反対論によって、大人から子どもへの性暴力を防ぐための政策決定ができなかったわけです
それは「成人が性行為をした場合に罪に問われる対象年齢を現在の13歳未満から16歳未満に引き上げる案」になっても同じである(児童福祉法第4条第1項によると、児童の定義は「児童とは、満十八歳に満たない者」だから)。また、「『年の離れた成人と中学生の子供に真剣な恋愛関係が存在する場合がある』」*7ことに否定にもなっていない(「児童福祉法34条1項6号の「児童に淫(いん)行をさせる行為」に該当し」
最後に、藤田孝典さんの2021年6月8日21時33分のツイートも挙げるが、ただの決めつけにすぎないし、リベラルを突き詰めればまさに「50歳の男性が14歳の女児と性行為しても自由」となるわけで、「退廃」ではない。なお、コトバンク「ペドフェリア」*10によると、「歴史的に性対象の異常とされてきたものには,以下の行為がある。(中略)自分と同性を対象とする同性愛、*11
性的に未熟な幼児を対象とする幼児性愛(ペドフィリアpedophilia)」とある。本エントリーの趣旨とズレるが、リベラル(個人の自由を尊重する主義)であれば、同性愛だろうがペドフィリアだろうが認めるというのはおかしくない。後者のみがダメであれば別の理由が必要だろう。というわけで、藤田孝典さんのツイート。
50歳の男性が14歳の女児と性行為しても自由、が日本型リベラル。
— 藤田孝典 (@fujitatakanori) 2021年6月8日
もう日本のリベラルが退廃しているわけ。
そんなもの自由意思の尊重でも何でもなく、単なる児童買春、児童への性搾取なんだよ。
いい加減にしろ、リベラル買春者。
(批判ばかりしやがって)という人もあろうから、最後に、筆者が考えさせられたツイートをいくつかリンクを貼って終わりにする。
50歳が14歳と性交だって?ぎゃっ変態と言う反応がまあ普通の市民的反応だと思うけれども(政治家は言い方が悪ければ当然糾弾されるのでさほど同情はない)、問題の本質は政府が私的な行為にどこまで介入すべきかということ。この場合、14歳には介入してよいのではないかとわたしは思うようになった。
— 三浦瑠麗 Lully MIURA (@lullymiura) 2021年6月5日
もし、本多議員のような意見を述べたのが自民党議員だったら、撤回せずに意見は意見で言い続けたし、党も処分しなかったと思う。枝野さんの思惑とは離れ、立憲民主党は穏健なリベラル保守政党ではなく、文革体質の政党になりつつあることがはっきりし、非常に残念です。https://t.co/grYVMg3FjZ
— 山口貴士 aka無駄に感じが悪いヤマベン (@otakulawyer) 2021年6月8日
「14歳と50歳の同意性交を問題ないというのは気持ち悪い」というような感情が前傾化しているけれど、全ての性愛・恋愛には気持ち悪い要素がまとわりつきますよね。煩悩だし。
— 柴田英里 (@erishibata) 2021年6月8日
中学生を性的な目で見るのが異常という風潮があるっぽいですが、第二次性徴を迎えた人(男女問わず)は生殖可能なのだから、動物的には性的な目で見られて当然という話をなんで殆ど誰も指摘しないのか不思議。近代人は人間は人間である前に動物であるという前提を無視し過ぎ。
— あしやまひろこ (@hiroko_TB) 2021年6月8日
*1:PRESIDENT Online「セクハラで女性記者の倫理を問う読売社説 身を守る"唯一の方法"だったはずだ」(沙鴎 一歩。2018年4月21日11時)に詳しい経緯が載っている
*2:「産経の 独自スクープ 実ったり」
https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/entry/2021/06/08/222456
*3:数字を全角から半角に改めた。以下同様の部分については説明しない
*4:産経新聞「<独自>「50歳が14歳と同意性交で捕まるのはおかしい」立民議員が主張」(2021年6月4日17時53分)
https://www.sankei.com/article/20210604-HMZXUI2DKBKBTGH5WQJW6RVTJU/?622280
*5:*4に同じ
*6:おそらく当時。現時点の条例は未調査。なお、他都道府県未調査
*7:*4に同じ
*8:伊藤和子「『50歳が14歳に性交』擁護発言・なぜまかり通るのか?今こそ政治の責任を問いたい。」
https://news.yahoo.co.jp/byline/itokazuko/20210610-00242248/
*9:最高裁判所昭和60年10月23日大法廷判決の説明は既にした。
*10:
*11:「,」を「、」に改めた
*12:前後も読んでください。なお、以下のツイートにも言えるが、注釈はつけない。