清高の ニュースの感想 令和版

題名川柳・内容超一流!

教員叩き 現場の悲鳴に 破れたり

 以前よく取り上げた(一部文字化けはあるが、当ブログ内で「教員免許更新」を検索した結果は、

https://kiyotaka-since1974.hatenablog.com/search?q=%E6%95%99%E5%93%A1%E5%85%8D%E8%A8%B1%E6%9B%B4%E6%96%B0 )、教員免許更新制が廃止になるという。読売新聞2021年7月11日統合版1面から引用してみよう。

 政府は、(略)教員免許を10年ごとに更新する教員免許更新制を廃止する方針を固めた。更新制は教員にとって手間がかかる割に資質向上の効果が低いと判断した。免許を無制限とする代わりに、教育委員会による研修を充実・強化させる(読売新聞2021年7月11日統合版1面)

 教員研修については、文部科学省HP「教員研修の実施体系」のpdfを見てもらうとして(

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/kenshu/__icsFiles/afieldfile/2019/10/29/1244827_001.pdf )、現在でも行われている「教育委員会による研修を充実・強化させる」(読売新聞2021年7月11日統合版1面)ことで特に問題はなさそうである。なお、『「免許更新制」では教師は育たない 教師教育改革への提言』(喜多明人・三浦孝啓・編、岩波書店、2010)pp.22-23も参考になろう(2010年当時の現場の声と一致した改革になりそう)。

 

 更新制は、「教育再生」を掲げた第1次安倍内閣時代の2007年の法改正で導入が決まり、09年度から実施された。目的は不適格な教員の排除ではなく、最新の知識・技能の習得だ。文科省の調査によると、昨年3月末が期限だった現職教員のうち、特例による期間延長も含めて免許更新したのは99.43%だった(読売新聞2021年7月11日統合版1面)

たしかに文部科学省HP「教員免許更新制」(2021年7月11日アクセス。 

https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/koushin/ )には「※ 不適格教員の排除を目的としたものではありません」とある。しかし、そもそもはそういう話ではなかった。平成19年(2007年)1月24日にアップされた首相官邸教育再生会議 第1次報告について」*1の本文のpdfファイル*2

https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kyouiku/kettei/070124honbun.pdf

)によると、


(4)真に意味のある教員免許更新制の導入
平成19年通常国会教育職員免許法改正案を提出
 教員は、教員養成課程で身に付けた能力・技術を日々磨き続け、専門性を深化させていくことが必要です。しかし、教育現場は多忙を極め、また、自らの能力・技術を把握する明確な指標もなく、有効な自己研鑽の機会が提供されていないことも事実です。
 教員が、時代の変化や要請に合わせた教育を行える能力や資質を確保するため、教員免許更新制を導入することが必要です。ただし、10年ごとに30時間の講習受講のみで更新するのではなく、厳格な修了認定とともに、分限制度の活用により、不適格教員に厳しく対応することを求めます。

 

○ 国は、教育職員免許法等を改正して、教員免許更新制を導入し、教員の更なる資質向上を図る。その際、講習受講のみで更新するのではなく、メリハリのある講習とし、教員の実績や外部評価も勘案しつつ、講習の修了認定を厳格に行う仕組みとする。
指導力不足と認定されている教員については、更新講習ではなく、指導力を上げるための研修を優先的に行い、改善が図られない教員については、分限制度を有効に活用し、教員免許状を取り上げるなど、不適格教員に免許を持たせない仕組みとする。*3

微妙な言い回しだが、不適格教員の排除と何ら関係ない書き方にはなっていない(教員免許更新制の話と併せて書いてあるから)。前述『「免許更新制」では教師は育たない(略)』第1章pp.1-11(なお、不適格教員の排除だけが理由ではないことは、同書pp.13-16で指摘されている)、『誰のための「教育再生」か』(藤田英典・編、岩波新書、2007)p73の分析は妥当である。なお、『誰のための「教育再生」か』p74に『「不適格教師」』のデータがあるが、「『不適格教師』の数は0.1%以下」*4だそうで、「免許更新したのは99.43%だった」(読売新聞2021年7月11日統合版1面)ということと矛盾しなさそうである(更新できない=不適格、とは限らないから)。

 

(教員免許更新制の。筆者補足)負担感が、教員不足に拍車をかけるとの懸念も出ている。文科省が4~5月、現職教員約2100人を対象に行ったアンケートでは、36.8%が「早期退職のきっかけになると思う」と回答した(読売新聞2021年7月11日統合版1面)*5

「負担感」については、前述『「免許更新制」では教師は育たない(略)』p29「更新講習で悲鳴をあげる教師たち」でも取り上げられている(「『早期退職』」(読売新聞2021年7月11日統合版1面)からはズレるが)。 

 

 ともあれ、教員免許更新制導入時の懸念、導入後の悲鳴が妥当だということが明らかになった。本エントリーで引用した岩波書店の2冊(『誰のための「教育再生」か』、『「免許更新制」では教師は育たない 教師教育改革への提言』)を読んで勉強をし直すのは全国民必須だと思う。

*1:数字を半角に改めた。

*2:適宜「概要」のpdfファイルも参照した。

*3:文章を引用者が整理した。

*4:漢数字をアラビア数字に改めた。

*5:原文の中黒を小数点に改めた。